宝塚市パチンコ店規制条例事件をわかりやすく解説していきます。
宝塚市が、パチンコ店の建築工事を中止するよう命じたにもかかわらず工事を続けた業者に対し、工事を中止するよう求めた訴訟です。
最高裁は、国や地方公共団体が国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法律上の争訟には当たらず、裁判所の審判の対象外であると判示しました。
行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は法律の争訟に当たらないとした点は重要なポイントとして押さえておきましょう。
- 国又は地方公共団体が、国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法律上の争訟に当たらない。
- 上告人の提起した訴訟は、地方公共団体である上告人が条例に基づく行政上の義務の履行を求めて提起したものであり、法律上の争訟に当たらないため不適法である。

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事件の概要:パチンコ店建築と条例違反
この事件の舞台は、兵庫県宝塚市。ある業者が、市の条例で定められた手続きを経ずにパチンコ店の建築工事を始めました。
宝塚市は、この行為が条例違反にあたると判断し、業者に対して建築工事の中止命令を出しました。
しかし、業者はこの命令を無視し、工事を続行したのです。
そこで、宝塚市は、業者が工事を中止するように求める訴訟を裁判所に提起しました。
市の主張は、「条例を守らない業者は許せない!裁判所よ、この業者に工事を中止させる判決を出してくれ!」というものでした。
争点:市の訴えは裁判で認められるのか?
この事件の争点は、「地方公共団体が、条例に基づく行政上の義務の履行を求める訴訟は、裁判所の審判対象となるか(法律上の争訟に当たるか)」という点です。

裁判所は、法律に基づいて、当事者間の争いを公平に解決する役割を担っています。
しかし、全ての争いが裁判の対象となるわけではありません。
裁判所が扱うことができるのは、「法律上の争訟」に限られます。
法律上の争訟とは、当事者間の具体的な権利や義務、法律関係について、法令を適用することで解決できる争いのことです。
例えば、契約違反や損害賠償請求などは、契約に関する法律や民法などを適用することで、解決することができます。
では、今回のケースはどうでしょうか?宝塚市は、業者が条例に違反していることを理由に、工事を中止させるよう求めています。
これは、市が条例という法令に基づいて、業者に義務の履行を求める行為です。
しかし、裁判所は、このような訴えは法律上の争訟には当たらないと判断しました。
判決:市の訴えは不適法!
最高裁判所は、国や地方公共団体が国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法律上の争訟には当たらず、不適法であると判示しました。
行政権の主体としての訴え
国や地方公共団体は、二つの顔を持っています。
- 財産権の主体:土地や建物などを所有し、それらに関する権利を行使する主体
- 行政権の主体:国民に対して命令や許可などを行い、社会秩序を維持する主体
今回のケースでは、宝塚市は行政権の主体として、業者に対して条例に基づく義務の履行を求めています。
このような訴えは、法規の適用の適正や一般公益の保護を目的とするものであり、自己の権利利益の保護救済を目的とするものとは異なるとされました。
この裁判で宝塚市は、まるで「この条例を破るなんて許せない!言うことを聞かない業者をこらしめてほしい!」と、感情的に訴えているように見えます。
しかし、最高裁は、宝塚市のこの訴えを冷徹に分析し、その裏に隠された「二つの顔」を指摘しました。
一つ目の顔は、「財産権の主体」としての宝塚市です。これは、私たちと同じように、土地や建物などを所有し、それらに関する権利を行使する姿です。
例えば、市が所有する土地に誰かが無断で家を建て始めたら、市は当然「それは私の土地だ!出て行ってくれ!」と主張することができます。
これは、市が自分の財産を守るための当然の権利行使であり、裁判でも認められます。
しかし、今回のケースで宝塚市がとった行動は、少し違います。
市は、パチンコ店建設業者に対して、条例に基づいて建築工事の中止を命じました。
これは、市の所有地を守るためではなく、条例というルールを守らせるための行動です。
つまり、宝塚市は、もう一つの顔である「行政権の主体」として行動したのです。
行政権の主体としての宝塚市は、市民全体の利益を守るために、条例を制定し、その違反者に対しては罰則を科したり、是正を求めることができます。
しかし、その権限行使は、あくまで法の範囲内で行われなければなりません。
最高裁は、宝塚市が業者に対して起こした訴訟は、行政権の主体として、条例という法規の適正な適用と一般公益の保護を目的としたものであると判断しました。
そして、このような訴訟は、自己の財産権を守るための訴訟とは異なり、法律上の争訟には該当しないため、裁判の対象にはならないと結論づけました。
つまり、宝塚市は、条例違反の業者に対して、裁判ではなく、行政代執行などの別の法的措置を取るべきだったのです。
この判決は、行政がその権限を行使する際には、自らの立場を明確に認識し、適切な手続きを踏む必要があることを示しています。
感情に流されて安易に裁判を起こすのではなく、法の支配に基づいた冷静な対応が求められるのです。
行政代執行という選択肢
では、宝塚市は、条例違反の業者に対して、どのように対応すればよかったのでしょうか?
この判例では、行政代執行法という法律が紹介されています。
この法律は、行政上の義務の履行確保について定めたもので、代執行という手段を規定しています。
代執行とは、行政庁が、義務者が義務を履行しない場合に、自らまたは第三者に費用を負担させて義務を履行させることができる制度です。
宝塚市は、この代執行という手段を用いることで、条例違反の建築工事を強制的に中止させることができたはずです。
まとめ
宝塚市パチンコ店規制条例事件は、行政の役割と法の支配について、改めて考えさせられる判例です。
行政は、社会秩序を維持し、公益を実現するために、様々な権限を行使します。
しかし、その権限行使は、法律の範囲内で適正に行われなければなりません。
この判例は、行政が国民に対して義務の履行を求める場合、裁判という手段ではなく、行政代執行などの法律に基づく手続きを踏むべきであることを示しています。
これは、法の支配の原則を貫徹し、行政権の恣意的な行使を防ぐために重要な考え方です。
行政書士試験の学習においても、この判例は行政法の基礎知識を深める上で重要な教材となります。
特に、行政の権限行使と法の支配の関係、行政代執行の仕組みなどについては、しっかりと理解しておく必要があるでしょう。
この判例をきっかけに、行政の役割や責任、そして法の支配の重要性について、さらに深く考えてみるのも良いかもしれませんね。
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