不利益処分

行政手続法の不利益処分とは?全体像をわかりやすく解説!!

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行政手続法の不利益処分とは、行政機関が国民に対して義務を課したり権利を制限する処分であり、申請に対する拒否など一部例外を除き、国民の利益を制限するもの行為のことをいいます。
ここでは、不利益処分の定義から、その処分基準、理由の提示、聴聞手続き、そして弁明の機会の付与まで、不利益処分の基本部分を幅広く解説していきます。
まずは、不利益処分の規定が、行政機関に対して公正な判断を促し、国民の権利を保護する役割を果たしていることを理解していきましょう。

ぱぱお
ぱぱお
私たち国民の権利を保護するための法律であることは意識しておきましょう。

行政手続法の「不利益処分」について、重要となるポイントは下記となります。

成り上がリーガルポイント
  • 不利益処分:名あて人に対して義務を課したり、その権利を制限したりする行為のこと。
  • 処分基準:不利益処分をするかどうか、どのような不利益処分とするかを判断するための基準です。
  • 理由の提示:不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、不利益処分の理由を示さなければなりません(例外あり)
  • 聴聞:行政庁が不利益処分をしようとする場合に、不利益処分の名あて人となるべき者に対して、意見陳述のための手続を執らなければならないというものです。
  • 弁明の機会の付与:聴聞の場合と比べて不利益の程度が軽い場合に採られる手段となります。

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行政手続法の不利益処分とは?全体像をわかりやすく解説!!

行政手続法の中で不利益処分について定義している条文から見ていきましょう。

不利益処分〔第2条4号(イ~ニ)〕

不利益処分 行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。ただし、次のいずれかに該当するものを除く。
イ 事実上の行為及び事実上の行為をするに当たりその範囲、時期等を明らかにするために法令上必要とされている手続としての処分
ロ 申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分
ハ 名あて人となるべき者の同意の下にすることとされている処分
ニ 許認可等の効力を失わせる処分であって、当該許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出があったことを理由としてされるもの

これは文字通り、結果的に利益を奪う行為となるため国民にとっては不利益となるものであり、その範囲は営業許可の取り消しや特定の給付金の停止など多岐にわたります。
具体的には、飲食店を営業している人に対して、不衛生などの理由から営業停止にする処分などが該当します。

名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分という一文は、「申請に対する処分」も対象が「申請者対して」になるだけで同じような形式となりますので、合わせて覚えておきましょう。
申請に対する処分については、下記をご覧ください。

行政手続法 第2章 申請に対する処分とは?【分かりやすく】ポイントを解説行政手続法における「申請に対する処分」とは、行政手続きにおいて重要な概念の一つです。 この記事では、行政書士試験のポイントも押さえつつ...

日常生活でよく見かける不利益処分の具体例としては、以下のようなものがあります。
ルール違反が起点となっていることがイメージができると思います。

不利益処分の一例
  • 違法駐車に対する罰金:違法駐車をした車両の所有者に対して、罰金を支払う義務を課す処分
  • 飲食店の営業許可の取り消し:衛生管理が不適切な飲食店に対して、営業許可を取り消す処分

不利益処分の適用範囲

不利益処分は、名あて人に対して義務を課すもので、国民の権利を奪う行為ですが、全てが不利益処分に該当するわけではありません。
例えば、申請に対する拒否(申請拒否処分)は、不利益処分に該当しません。

先ほど見た一例のように、既に持っているものに処分する行為が不利益処分となるため、申請に対する処分は申請(これから権利を求める)行為に対して行う拒否であるため、不利益処分にはなりません。

考えれば当たり前のように思いますが、文章となるとちょっとしたニュアンスの違いで混乱する可能性もあるため、きちんと押さえておきましょう。

不利益処分の[処分基準](12条)とは?

処分基準とは、不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについて、判断するための基準を定める際の規定です。

処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない。と努力義務とされているところは押さえておきたいポイントとなります。
申請に対する処分の審査基準の場合は、基準を定めるときは努力義務、設定した際は公にしなければならないという法的義務となります。

審査基準 設定:努力義務
公開:法的義務
処分基準 設定:努力義務
公開:努力義務

また、処分基準を定めるに当たって、具体的なものとしなければならない。という「具体的」である必要があることもポイントとして押さえておきましょう。

不利益処分の[理由の提示](14条)とは?

不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、不利益処分の理由を示さなければならない。ということで法的義務となります。
なお、申請に対する処分の理由の提示も同様に「申請者に」理由を示す規定が設けられています。

ただし、処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りではない。とされているため、場合によっては同時に提示しなくても良いとされています。
まずは、暫定対処でその場をやり過ごすイメージです。
あくまでも暫定対処なので、処分後相当の期間内に、理由を示すという、恒久対処が必要となります。

この理由の提示は、名あて人がその処分に対して適切に対応するための情報を得るためのものでもあります。

不利益処分の[意見陳述のための手続](13条)とは?

国民にとって不利益な処分となるため、行政庁の独断と偏見で一方的にされては困りますよね?
そのため、不利益処分をする場合に、不利益処分の名あて人となるべき者に対して、意見陳述のための手続を執らなければならない。という規定が法的義務として設けられています。

不利益処分の度合いによって、「聴聞」か「弁明の機会」の2つのどちらからで行われますが、処分が重い場合に聴聞の手続が行われます。

聴聞 > 弁明の機会

聴聞とは?

聴聞は、許認可を取り消す不利益処分をする場合など、条文で規定されたものに該当する場合に執られる手続きです。

聴聞手続きについては、聴聞の通知から、聴聞の終結、その後の規定まで、いくつかの段階に分けて説明することができます。
最終的な処分を決定するところまで規定されています。
また、名あて人に与えられる権利や文書等の閲覧といった細かい権利まで規定されています。

基本的には期日に出頭して行う口頭審理手続となります。
※書面が認められる場合もあります。

弁明の機会の付与とは?

弁明の機会の付与は、聴聞の場合と比べて不利益の程度が軽い場合に採られる手段となります。
原則として書面による手続きを採りますが、認められる場合には口頭でも行うことができます。

弁明の機会の規定が準用される部分は、試験でのポイントになってきそうです。

まとめ

行政手続法の「不利益処分」についてでした。
不利益処分は、行政庁が特定の者に対して義務を課したり、その権利を制限したりする処分を指し、その適用範囲や処分基準、理由の提示、聴聞手続き、弁明の機会の付与など、様々な規定が設けられています。

その重要性は営業許可の取り下げなど具体例を通じて理解できる。行政手続法では公正な手続きを確保するため、不利益処分に関する規定が設けられており、申請に対する処分との比較をしながら理解していくと体系的に理解できるので知識も深まります。

不利益処分も、公正な判断と透明性を促し、国民の権利を保護する役割を果たしていることが分かります。