不利益処分

行政手続法 不利益処分の聴聞と弁明の機会の付与の違いとは?流れ【条文】に沿って解説!!

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「聴聞」は口頭審理が原則で、重大な不利益処分を行う場合に行われます。
一方、「弁明の機会の付与」は書面審理が原則で、比較的軽微な不利益処分に関する手続きとなり、意見陳述手続とも呼ばれています。

2つの意見陳述手続は、それぞれ異なる形式と適用範囲を持つ意見陳述の機会で、行政庁が不利益処分を行う前に、その対象となる者(名あて人)に対して、自身の意見を述べる機会を与えるものです。

今回は、そんな行政手続法 不利益処分の聴聞と弁明の機会の違いについて、聴聞と弁明の機会の付与の内容も踏まえて解説していきます。

成り上がリーガルポイント
  • 形式:「聴聞」は口頭審理が原則であり、「弁明の機会の付与」は書面審理が原則
  • ケース:「聴聞」は重大な不利益処分を行う場合に行われ、「弁明の機会の付与」は比較的軽微な不利益処分に関する手続き
  • 名参加人の関与:「聴聞」では参加人の関与が認められていますが、「弁明の機会の付与」では認められない
  • 文書等の閲覧:「聴聞」では文書等の閲覧が可能ですが、「弁明の機会の付与」では認められていません
  • 弁明の機会で聴聞の規定が準用されるケース:通知(15条3項)と代理人(16条)のみ

意見陳述手続は、行政手続法、第3章の「不利益処分」に該当し、不利益処分とは、行政庁が法令に基づき、特定の者に対して直接的に義務を課したり、その権利を制限する処分のことを指します。
処分、不利益処分の意味、行政手続法の「不利益処分」全体から見た意見陳述手続の位置づけについては下記のまとめ記事よりご覧ください。

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行政手続法 不利益処分の聴聞と弁明の機会の付与の違いとは?

行政手続法における「聴聞」と「弁明の機会の付与」は、行政機関が不利益処分を行う前に、その対象となる者(名あて人)に対して、自身の意見を述べる機会を提供しなければならないという法的義務として、13条で定義されています。

この2つの意見陳述手続は、形式、適用されるケース、参加人の関与、文書等の閲覧という4つの重要な点で異なります。
条文によると、聴聞をすべき処分は下記となり、該当しない場合は、弁明の機会の付与となります。

聴聞となる処分
  • 許認可等を取り消す場合
  • 名あて人の資格や地位を直接に奪う場合
  • 法人の役員の解任や会員の除名を命じる場合
  • 行政庁が相当と認める場合

処分によっては、行政手続法の規定を適用することができない場合があり、それを適用除外といいます。(行政手続法 総則 第3,4条)
聴聞や弁明の機会の付与も行政手続法のため、同条に従って例外が認めらることになります。

これらの意見陳述手続は、行政庁の恣意を抑制し、不利益処分を受ける側に防御の機会を与えるために存在します。
聴聞が適用される例として、下記のようなものがあります。

聴聞に該当する例
  • 運転免許の取消
  • 建築許可の取消

弁明の機会が付与される例は、下記のようなものがあります。

弁明の機会に該当する例
  • 業務停止命令
  • 操業の禁止命令(工場による環境汚染など)

ここからは、聴聞および弁明の機会の付与について、流れに沿って概要を見ていきましょう。

行政手続法 不利益処分の聴聞とは?

聴聞の手続きは、以下のように進められます。

通知 → 聴聞の手続 → 聴聞の実施 → 聴聞の終結 →処分の決定

当事者となる名あて人に対して認められている権利にも注目して見ていきましょう。

聴聞の通知の方式(15条)

不利益処分を行う前に、名あて人に対して、予定される不利益処分の内容・根拠法令の条項、聴聞の期日といった聴聞に関する情報を記載した書面により通知します。
この規定を定めているのが、第15条の聴聞の通知の方式です。
なお、所在が不明だと認められる場合は、行政庁の事務所に掲示することで通知したとみなすことができます。(2週間経過で到達とみなす)

通知の内容

行政庁は、聴聞を行うべき期日までに相当な期間をおいて、不利益処分の名あて人となるべき者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければなりません。

聴聞の通知の方式(15条1項)

1. 予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項
2. 不利益処分の原因となる事実
3. 聴聞の期日及び場所
4. 聴聞に関する事務を所掌する組織の名称及び所在地

これらの通知内容は、名あて人が自身の権利を適切に主張するために必要な情報でもありますし、これにより、名あて人は自身の立場を理解し、適切な対応をとることが可能となります。

突然連れていかれる分けではなく、それに向けた準備もできるようになっています。

ぱぱお
ぱぱお
もっと言うと、準備しないと知らないからね。という意味にもなりそうです。

教示

行政庁は、上記の通知内容に加えて、次に掲げる事項を教示しなければならないとされています。

教示

1. 聴聞の期日に出頭して意見を述べ、及び証拠書類又は証拠物(以下「証拠書類等」という。)を提出し、又は聴聞の期日への出頭に代えて陳述書及び証拠書類等を提出することができること。
2. 聴聞が終結する時までの間、当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができること。

名あて人が自身の権利を適切に行使するための重要な情報を提供することが定められています。
これにより、名あて人は自身の立場を理解するとともに、適切な対応をとることが可能となります。

聴聞に関する手続き(16条~18条)

名あて人は、代理人を選任することが可能となっており、その代理人に関する規定を16条、利害関係を有すると認められる参加人の参加を認める規定を17条で規定しています。

聴聞に関する手続のポイント
  • 第16条:当事者が自身の権利を適切に行使するために、代理人を選任することが可能であることを明示
  • 第17条:当事者以外の者が手続きに参加することを可能にし、手続きの公平性と透明性を保証
  • 第18条:当事者や参加人が手続きに関する情報を適切に得ることで、手続きの公平性と透明性を保証

代理人(第16条)

第16条は、代理人に関する規定を定めています。

代理人(16条)

前条第一項の通知を受けた者(同条第三項後段の規定により当該通知が到達したものとみなされる者を含む。以下「当事者」という。)は、代理人を選任することができる。
2 代理人は、各自、当事者のために、聴聞に関する一切の行為をすることができる。
3 代理人の資格は、書面で証明しなければならない。
4 代理人がその資格を失ったときは、当該代理人を選任した当事者は、書面でその旨を行政庁に届け出なければならない。

例えば、大切な会議に誰かに代わりに出席してもらうような状況で、その「誰か」が「代理人」となり、当事者の代わりに聴聞に出頭します。
行政手続きにおいても、当事者は自身の権利を適切に行使するために、代理人を選任することができます。
弁明の機会にも準用されます。

この条文は、当事者が自身の権利を適切に行使できるようにするためのものです。
代理人を通じて、当事者は自身の意志を適切に表現し、自身の権利を保護することができます。

参加人(第17条)

第17条は、参加人に関する規定を定めています。

参加人(17条)

第十九条の規定により聴聞を主宰する者(以下「主宰者」という。)は、必要があると認めるときは、当事者以外の者であって当該不利益処分の根拠となる法令に照らし当該不利益処分につき利害関係を有するものと認められる者(同条第二項第六号において「関係人」という。)に対し、当該聴聞に関する手続に参加することを求め、又は当該聴聞に関する手続に参加することを許可することができる。
2 前項の規定により当該聴聞に関する手続に参加する者(以下「参加人」という。)は、代理人を選任することができる。
3 前条第二項から第四項までの規定は、前項の代理人について準用する。この場合において、同条第二項及び第四項中「当事者」とあるのは、「参加人」と読み替えるものとする。

当事者以外の人が手続に参加することを認めていますが、利害関係を有するという形になります。
当事者の利益権利を制限することで、派生して利益権利が制限される可能性がある場合などが想定されます。
※だれでも参加できる訳ではありません。

文書等の閲覧(第18条)

第18条は、文書等の閲覧に関する規定を定めています。

文書等の閲覧(18条)

当事者及び当該不利益処分がされた場合に自己の利益を害されることとなる参加人(以下この条及び第二十四条第三項において「当事者等」という。)は、聴聞の通知があった時から聴聞が終結する時までの間、行政庁に対し、当該事案についてした調査の結果に係る調書その他の当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができる。この場合において、行政庁は、第三者の利益を害するおそれがあるときその他正当な理由があるときでなければ、その閲覧を拒むことができない。
2 前項の規定は、当事者等が聴聞の期日における審理の進行に応じて必要となった資料の閲覧を更に求めることを妨げない。
3 行政庁は、前二項の閲覧について日時及び場所を指定することができる。

この条文は、当事者や参加人が手続きに関する情報を適切に得る権利を保障しています。
例えば、大きな買い物をする際の契約書へのサインをするときと同様で、その記載の内容を読み込んで、理解することが重要ですし、気になったことは質問しますよね?
このように、行政手続きにおいても、当事者や参加人が手続きに関する情報を適切に得ることができます。

何でもかんでも閲覧ができる訳ではないことを押さえておきましょう。(第三者の利益をおそれるとき、相当な理由があれば拒める)

聴聞の主宰および当事者の権利(19条~22条)

名あて人は、聴聞の通知から聴聞終結までの間、行政庁に対して、当該事実についてした調査の結果に係る調書や当該不利益処分の原因となる事実を証明する書面の閲覧を請求できるなど、当事者の権利についても保障されています。

また、聴聞の当日の審理方式についても条文による規定が及びます。
どうやって聴聞を進めるのか。どういった権利があるのか。という部分に注目していきましょう。

聴聞の主宰、当事者の権利
  • 第19条:聴聞は行政庁が指名する職員その他政令で定める者が主宰し、公正性を保証
  • 第20条:主宰者は聴聞の期日の冒頭で予定される不利益処分の内容等を説明し、当事者や参加人は意見を述べたり質問ができる
  • 第21条:当事者や参加人は聴聞の期日への出頭に代えて陳述書や証拠書類等を提出できる
  • 第22条:主宰者は聴聞を続行する必要があると認めるとき、新たな期日を定めることができる

第19条:聴聞の主宰

この条文では、聴聞は行政庁が指名する職員その他政令で定める者が主宰することを規定しています。
当たり前ですが、身内で固めるような出来レースをすることは許されません。
※親族、当事者(参加人)、代理人、補佐、後見人等はNG(それ以外はOK)

また、この条文では、聴聞を主宰することができない者も明確に定められています。
具体的には、当該聴聞の当事者や参加人、その配偶者や親族、代理人や補佐人などが該当します。
これらの者が主宰者となると、公正性が損なわれる可能性があるため、そのような状況を避けるための規定と言えます。

第20条:聴聞の期日における審理の方式

主宰者は、最初の聴聞では予定される不利益処分の内容とその根拠となる法令の条項、その原因となる事実を説明することが求められています。(1項)
聴聞の趣旨を伝えると共に当事者も内容を再度認識することができます。
目の前で言われるのは結構堪えそうですが。

また、当事者や参加人は、主宰者の許可を得て行政庁の職員に対し質問を発することができます。(2項)
さらに質問を発する際は補佐人と共に行うこともできます。(3項)
これら2つは主宰者の許可が必要となりますが、その他は主宰者の許可は必要ありません。
なぜかというと、当事者側視点の条文はこの2つしかないからです。
※事前に主宰者の許可を得て書類を提出するのはちょっとおかしいですよね。

主宰者は当事者、参加人に対して、質問することができますし、証拠書類の提出または行政庁の職員に説明を求めることができます。(4項)
また、当事者、参加人が一部欠席でも主宰することができます。(5項)
※主宰者の権利

そして、公開することを相当と認めない限り、聴聞の審理を公開しません。(6項)

第21条:陳述書等の提出

主宰者に対して、当事者や参加人は聴聞の期日への出頭の代わりに聴聞の期日までに陳述書及び証拠書類等を提出するが認められています。
学生が授業で学んだことをレポートにまとめて提出するのと同じように、当事者や参加人は、自分たちの意見や証拠を陳述書や証拠書類等として提出することができます。
また、その求めに応じて、主宰者は、聴聞の期日に陳述書及び証拠書類等を示すことができます。

第22条:続行期日の指定

主宰者が聴聞の結果、次回の聴聞が必要と判断した場合、新たに期日を定めることができます。
要するに1度では終わらなかったパターンですね。

当然、次回の聴聞の期日及び場所は書面により通知しなければなりません。
通知の方式は15条文を読み替える形で記載がありますが、同様の方式となります。

聴聞の終結(23条~25条)

聴聞の終結後に陳述書を提出するといった規定や、聴聞の再開といった事後の手続についても規定があります。
聴聞の期日に出頭しない場合は、聴聞を終結できるといった強制終了も条文によって認められています。

聴聞の終結
  • 第23条:当事者が聴聞の期日に出頭しない場合や、陳述書や証拠書類等を提出しない場合に、主宰者は聴聞を終結することができる
  • 第24条:主宰者は、聴聞の審理の経過を記載した調書を作成し、不利益処分の原因となる事実に対する当事者及び参加人の陳述の要旨を明らかにしておかなければならない。
  • 第25条:行政庁は、聴聞の終結後に生じた事情にかんがみ必要があると認めるときは、主宰者に対し、前条第三項の規定により提出された報告書を返戻して聴聞の再開を命ずることができる。

第23条:聴聞の終結

当事者が聴聞の期日に出頭しない場合や、陳述書や証拠書類等を提出しない場合について規定しており、主宰者には聴聞を終結する権利が与えられています。
明らかにおかしいと判断されれば聴聞の機会を与えられることなく終結されます。

当事者が聴聞に参加しない場合でも、手続きは進行しますが、それは当事者の権利を侵害するものとはなりません。
当事者は自身の意見を述べ、証拠を提出する機会を与えられていますが、いつまでも機会が与えられる訳ではないため、当事者側にも聴聞に対応する姿勢も大切になります。

第24条:聴聞調書及び報告書第25条:聴聞の再開

聴聞終了後についても条文で規定されています。(聴聞版アフターサービスのイメージ)
聴聞~処分まで間にどうなっているの?という判断がされた場合、一度、終結した聴聞の再開を命令することができます。
聴聞が終わったからといって、終了する訳ではなく、処分が決定されるまでは再開の可能性が残されています。

終結後に生じた事情にかんがみ、必要とある場合とされています。
新たな事実や証拠が明らかになった場合、または手続きの適正性に疑問が生じた場合など、聴聞の再開が必要と判断される状況が想定されそうです。

処分の決定等(26条~28条)

処分の決定に関する規定や、審査請求の制限、聴聞に関する特例について設けられています。

聴聞の終結
  • 第26条:聴聞を経て不利益処分の決定をする際には、事前に行われた聴聞の結果を適切に考慮すること。
  • 第27条:聴聞手続内の処分、不作為は審査請求できない。
  • 第28条:役員等の解任で通常の聴聞の手続きを省略することができる。

第26条:聴聞を経てされる不利益処分の決定

いよいよ、不利益処分の決定についてとなります。
聴聞を行った場合の不利益処分の決定をする際の決まり事として、第24条第1項の調書の内容、第3項の報告書に記載された主宰者の意見を考慮することを規定しています。
※当たり前すぎますが、無視できないような拘束力が働いているとも言えます。

ぱぱお
ぱぱお
もっと言うと、準備しないと知らないからね。という意味にもなりそうです。

第27条:審査請求の制限

この節に基づくということなので、第2節の聴聞に当たり、その中の不作為は審査請求できないということなので、「聴聞手続で行われる処分と不作為は審査請求できない」という風に読み替えます。
第26条までで正しく行われたあとの処分(聴聞を経た場合の処分)は審査請求できるのがポイントとなります。

当たり前のような思いますが、出頭しないことで終結され、処分が決定したのにも関わず、不服申し立てできることになってしまい、聴聞の意味がなくなってしまいます。

審査請求とは

行政不服審査法に基づく不服申立ての一類型であり、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為によって不利益を受けた国民が不服を申し立て、これを行政庁が審査する手続

第28条:役員等の解任等を命ずる不利益処分をしようとする場合の聴聞等の特例

聴聞等の特例について規定しております。

聴聞手続の特例

第十三条第一項第一号ハに該当する不利益処分に係る聴聞において第十五条第一項の通知があった場合におけるこの節の規定の適用については、名あて人である法人の役員、名あて人の業務に従事する者又は名あて人の会員である者(当該処分において解任し又は除名すべきこととされている者に限る。)は、同項の通知を受けた者とみなす。
2 前項の不利益処分のうち名あて人である法人の役員又は名あて人の業務に従事する者(以下この項において「役員等」という。)の解任を命ずるものに係る聴聞が行われた場合においては、当該処分にその名あて人が従わないことを理由として法令の規定によりされる当該役員等を解任する不利益処分については、第十三条第一項の規定にかかわらず、行政庁は、当該役員等について聴聞を行うことを要しない。

条文を読むとややこしく感じるかもしれませんが、通常の聴聞の手続きを省略することができるという特例を設けています。
聴聞とすべき事項を定めた、第13条第1項第1号ハでは名あて人は法人で、(法人の)役員の解任を命ずる不利益処分としています。
その15条1項の通知を受けるのは、法人となります。(名あて人)
は、同項の通知を受けたということなので、役員も通知を受けたとみなすことができるということになります。
※役員が俺は知らんといっても法人に通知がいった以上、役員にも及ぶことになります。
法人=法人役員というイメージで良いと思います。(役員なのに通知来たの知らないの?)
ここまでが、1項です。

2項では、法人(名あて人)が役員の解任の処分に従わなかった場合の規定で、行政庁の権利で役員を解任することができます。
しかも、法人に対して行っているので、聴聞はされません。

弁明の機会の付与の手続きとは?

弁明の機会の付与の手続きも、聴聞の手続きと同様に進められますが、弁明の機会の付与は、聴聞手続きが必要な場合以外の不利益処分をする際の手続きであり、軽い不利益処分に関する手続きとなります。

弁明の機会で聴聞の規定が準用されるケースは通知(15条3項)と代理人(16条)のみ

弁明の機会
  • 第29条:弁明は原則として書面によって行われ、証拠となる書類等を提出することが可能
  • 第30条:15条と同様に書面で通知される
  • 第31条:第15条第3項及び第16条の規定は、弁明の機会の付与について準用される

第29条:弁明の機会の付与の方式

どのような機会を付与すべきかというもので、弁明は原則として弁明書を記載した書面(弁明書)によって行うとしています。(1項)
行政庁が口頭による弁明を認めた場合は口頭も認められています。
※聴聞は口頭が基本(書面も認められる)

また、聴聞と同様に弁明に向けて、証拠となる書類等を提出する権利が認められています。(2項)
※弁明の機会の方が軽いとは言いつつもこういった意見陳述に関する権利は認められています。
商品を間違えて購入した際にレシートという証明があれば、返金してくれる場合があるように、こうした書類を提出する機会も与えられます。

第30条:弁明の機会の付与の通知の方式

聴聞の15条(通知の方式)と同様に、弁明書の提出期限もしくは口頭でする日時までに書面で通知することとしています。

書面で通知する事項

1. 予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項
2. 不利益処分の原因となる事実
3. 弁明書の提出先及び提出期限(口頭による弁明の機会の付与を行う場合には、その旨並びに出頭すべき日時及び場所)

例え弁明の機会の付与という軽い処分だとしても、行政手続法が掲げる公正さと透明性を保証するためには必要なものです。
また、相当な期間をおいて、通知しなければならない。とされているため、名あて人となる者は弁明書の作成や書類を提出等を行う権利が保障されています。

第31条:聴聞に関する手続の準用

聴聞に関する手続が準用されるケースを規定しています。
聴聞の規定が認められるのはこの条文で規定している範囲のみとなります。
行政庁の掲示板での通知(公示)(第15条第3項 )と代理人(第16条)の規定のみとなります。

  • 公示:公衆に知らせる
  • 告示:一般市民に周知

※選挙の場合、天皇が行うものが公示、選挙管理委員会が行うものは告示となります。

なお、読み替えの部分については、15条の通知の3号(期日、場所)、4号(聴聞に関する組織の名称)が第30条3号であるとしているので、公示によるお知らせをするときは、弁明書の提出先と期限等を記載すること。という意味になります。

16条の文中に前条第1項という文言が「30条(通知の方式)により通知を受けた者」となります。
続いて、同条第3項後段とあるのは、第15条第3項後段の・・・・簡単に言ってしまうと、31条は16条と同じ考え方になる。ということになります。
→30条により通知を受ける、「掲示から2週間経過して到達したとみなす」(第15条第3項後段)当事者は、代理人を選定できる。

なお、この2つだけが弁明の機会において、聴聞が準用されるケースなので押さえておきましょう。
文書等の閲覧請求といった、認められそうなものでも認められません。
弁明の機会は書面で行われることを念頭に置いておけば、文書等の閲覧はいつどこでするのか?という風にも考えることができます。
また、参加人も同様にいつ参加するの?となります。
代理人は代理で提出することはできますし、15条3項後段は通知したとみなす公示の部分となるため、弁明自体に影響がありません。

まとめ

行政手続法における不利益処分と聴聞・弁明の機会の付与は、その対象となる者(名あて人)に対して、自身の意見を述べる機会を与えるものとなります。
違いについては、冒頭でまとめた形になりますので、再度確認してみてください。

どちらも当事者に対して認められる権利でややこしい部分も出てくると思いますので、どの程度理解できているかの見極めも重要なポイントとなります。
この規定の理解は、行政書士試験にも役立つポイントとなります。
この記事が、その理解のきっかけとなれば嬉しいです。