行政手続法第12条は、行政庁が不利益処分を行う際の基準を定め、公にすることを努めなければならないと規定しています。
具体的な基準を設けるよう努めさせることで、公平性と透明性が確保されます。
- 処分基準は、定め、かつ、公にしておくよう努める(努力義務)
- 処分基準を定める際は、できる限り具体的なものとしなければならない(具体性)
12条の処分基準は、行政手続法、第3章の「不利益処分」に該当します。
処分、不利益処分の意味、行政手続法の「不利益処分」における12条の位置づけについては下記のまとめ記事よりご覧ください。
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行政手続法 不利益処分の処分基準とは?
まず、処分基準についての規定から見てみましょう。
処分基準(不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいう。以下同じ。)
この規定は、行政庁が行う不利益処分について、その基準を明確にし、公平性と透明性を確保するためのものであり、行政手続法の目的を果たすためのものとなります。
※ただし、努力義務にとどまります。
これを踏まえて、行政手続法の第12条の条文について見ていきましょう。
第十二条 行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない。
2 行政庁は、処分基準を定めるに当たっては、不利益処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。
行政庁が処分基準を定め、公にすることよう「努めなければならない。」という努力義務となります。
同じ基準を定める第5条の審査基準(申請に対する処分の審査基準)と比較してみると、より理解も深まります。
2条で定める処分基準を12条で義務付ける形となります。
不利益を与えるものですから、法令の定めに従う必要がありますし、具体性を求めるのも納得がいきます。
処分基準は[努力義務]
処分基準を定め、公にすることは努力義務とされています。
これは、行政庁が処分基準を定めた場合に公にすることを認めてしまうと、「ここまではやっていいんだ」という認識が生まれてしまう可能性もあります。
そのため、柔軟に対応できるようにしておく必要もあります。
例えば、営業停止の基準が公開されている場合、営業する側はその基準に搔い潜るようにすることで営業停止にはなりませんが、それによって衛生上の問題といった影響がが出ることも考えられます。
条文の問われ方はもちろんですが、その背景まで考えると自然と意味も分かり、汎用的な知識とすることができます。
処分基準は[具体的]に定めなければならない
第12条の2項では、行政庁が処分基準を定める際には、不利益処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならないと規定されています。
これは、行政庁が不利益処分を行う際の判断基準を、具体的かつ明確にすることを求めています。
処分とはかけ離れますが、レシピや操作マニュアルを作る時は、その手順を具体的に書くことと同じで、具体的な手順が書かれていれば、誰でもそのレシピを再現することができます。
次条の理由の提示にも関わりますが、曖昧になってしまうと、処分される側としたら納得ができませんし、事後の不服申し立て等の根拠にもなりません。
この具体性という、たったひと言ですが、行政手続法の公正の確保と透明性、国民の権利利益の保護に資する姿勢を知ることができます。
まとめ
行政手続法の第12条における不利益処分の処分基準についてでした。
この12条の処分基準の規定は、行政庁が行う不利益処分について、その基準を明確にし、公平性と透明性を確保するためのものであり、行政手続法の不利益処分の中でも重要な位置を占めています。
しかし、必ずしも公にしなければならない法的義務ではなく、努力義務にとどめており、手の内を明かさないことで適度なプレッシャーも設けております。
この努力義務であることからも、公平性の確保につながっていることが分かります。
また、処分基準は具体的なものであることは法的義務とされている(2項)ところは当たり前のように思えますが、ポイントとして押さえておきましょう。
※処分基準=努力義務ではない。
申請に対する処分の審査基準と比較しながら見ていくとポイントがわかってきます。
この12条(行政手続法 不利益処分の処分基準)の理解は、行政書士試験にも役立つポイントとなります。
この記事が、その理解のきっかけとなれば嬉しいです。