元々は国家無答責の原則という形で国民は国に損害賠償を請求することができませんでした。
そこで憲法として国家賠償請求を認めた(17条)ことで、国家賠償制度ができました。
国家賠償法はたった6つの条文ですが、国や地方公共団体が原因で損害を被った時に、私たちを守ってくれる大切な法律です。
例えば、壊れた道路で転んでケガをしたり、公務員の不適切な行為で被害を受けた場合などに、損害賠償を請求できる可能性があります。
- 国や地方公共団体が原因で損害を被った時に、賠償請求できる法律です。
- 公務員の違法行為による「公権力責任」と、施設の欠陥による「営造物責任」の2種類があります。
- 賠償責任は、基本的には国や地方公共団体が負いますが、場合によっては公務員個人や費用負担者も負うことがあります。
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国家賠償法をわかりやすく解説
市が管理している公園の遊具で遊んでいたら、老朽化していた遊具が壊れてケガをしてしまった…。
そんなとき、あなたならどうしますか?
泣き寝入り?諦める?
こんな時こそ「国家賠償法」の出番です。
国家賠償法は、国や地方公共団体(市町村など)のせいで損害を被ったときに、その損害を賠償してもらうための法律です。
例えば、壊れていた道路のせいで転んでケガをした、警察官に不当に逮捕されてしまったなど、国家賠償法に基づいて国や地方公共団体に損害賠償を請求できる可能性があります。
国家賠償請求が認められるパターンと認められないパターンを見極めるのもポイントとなっていきます。
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国家賠償法の2つの柱:1条責任(公権力責任)と2条責任(営造物責任)
国家賠償法には、大きく分けて2つの種類があります。
人かモノに分かれるイメージです。
1条責任:公務員の不法行為が原因の場合
これは、国や地方公共団体の公務員(警察官や学校の先生など)が、職務上のミスで損害を与えた場合に適用されます。
例えば、役所の職員が個人情報を漏洩した、児童相談所の職員が適切な対応をせず、虐待を見逃したなど、公務員の違法な行為が原因で損害を被った場合です。
公権力責任のポイントは、「国または公共団体の公権力の行使」「公務員」「職務行為」「故意・過失」「違法」「損害」の6つの要件が全て揃っているかどうかが重要となります。
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国または公共団体」の「公権力の行使にあたる」「公務員」で7つの要件と言われる場合もあります。
要件というと、行政事件訴訟法にも似たようなものがありましたね?
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2条責任:施設の欠陥が原因の場合
こちらは、国や地方公共団体が管理している道路や橋、公園などの施設(営造物)に欠陥があったために、損害を被った場合に適用されます。
例えば、壊れていた道路のせいで転んでケガをした、市が管理する公園の遊具で遊んでいたら、老朽化していた遊具が壊れてケガをしたなど、施設の欠陥や管理不足が原因で損害を被った場合です。
営造物責任のポイントは、「公の営造物」「設置または管理の瑕疵」「損害」の3つの要件が全て揃っているかどうかです。
特に、「瑕疵」とは、施設が本来備えているべき安全性を欠いている状態を指します。
- 公の営造物:国や地方公共団体が所有・管理している道路、河川、橋、公園、上下水道、庁舎などが該当します。
- 設置または管理の瑕疵:施設の設計、施工、維持管理などに問題があり、安全性が確保されていない状態です。
- 損害:あなたが実際に何らかの損害を被っている必要があります。
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ここまでの2条に共通するルールを定めるのが3条~6条です。
3条:費用負担者の賠償責任
国や地方公共団体が賠償責任を負う場合でも、公務員の給料や施設の管理費用を負担している人が別にいる場合は、その人も一緒に賠償責任を負うことがあります。
例えば、A市が管理する公園で、B市の職員がイベントを開催中に事故が発生し、Cさんがケガをした場合や、D県の職員が、E町が管理する道路で交通事故を起こし、Fさんにケガをさせた場合など、市町村が共同で賠償責任を負うこと場合もあります。
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4条:民法の規定の適用
国家賠償法の規定以外に、民法の規定も適用されることを定めています。
例えば、公務員が個人的に車を運転中に事故を起こし、他人にケガをさせた場合、民法の不法行為責任の規定が適用されるなどが該当します。
失火責任法が適用され、国家賠償請求が認められなかった判例もあります。
このケースは当該公務員に重大な過失があるものとされました。
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5条:他の法律との関係
国家賠償法の規定と、民法以外の他の法律の規定が矛盾する場合は、他の法律の規定が優先されることを定めています。
例えば、公務員が仕事中にケガをした場合、国家賠償法ではなく、国家公務員災害補償法の規定が適用される場合があります。
なお、民法は国家賠償法の次に位置することになります。
民法以外の法律 > 国家賠償法 > 民法
6条:外国人の場合の国家賠償
外国人が被害者の場合、相互保証がある場合に限り、国家賠償法が適用されることを定めています。
相互保証とは、日本人がその外国で国家賠償を受けられるなら、その外国人も日本で国家賠償を受けられるというルールです。
原則、外国人の被害者は国家賠償請求は認められていないので、押さえておきましょう。
※相互保証主義といわれます。
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まとめ
国家賠償法には、公務員の不法行為による「公権力責任」と、施設の欠陥による「営造物責任」の2つの種類があります。
公権力責任は、警察官の不当逮捕や個人情報漏洩など、公務員の違法な行為が原因で損害を受けた場合に適用されます。
一方、営造物責任は、壊れた道路や老朽化した遊具など、国や地方公共団体が管理する施設の欠陥が原因で損害を受けた場合に適用されます。
基本的には、国や地方公共団体が賠償責任を負いますが、公務員個人が故意や重大な過失で損害を与えた場合は、公務員個人も責任を負うことがあります。
また、公務員の給料や施設の管理費用を負担している人も、賠償責任を負う場合があります。