国家賠償法

国家賠償法1条1項の要件を表で理解!!6つのポイントはすべて満たす必要がある!?

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国家賠償法1条1項の要件は6つに分類され、すべてを満たすことで初めて国家賠償をすることができます。
そんな国家賠償法1条1項は要件として、公務員が職務上の違法行為で他人に損害を与えた場合に、国や地方公共団体が賠償責任を負うことを定めています。

成り上がリーガルポイント
  • 「国または公共団体」の「公権力の行使」に当たる行為であること
  • 「公務員」が行為の主体であること
  • 「職務」を行うについてなされた行為であること
  • 「故意または過失」があること
  • 「違法」な行為であること
  • 他人に「損害」を加えたこと

これらの要件はそれぞれ複雑な解釈があり、具体的な事例や判例を参考に判断されます。

もし公務員の不法行為によって損害を被った場合は、国家賠償法に基づいて損害賠償を請求できる可能性があります。

国家賠償法1条1項の要件とは

国家賠償法1条1項は、公務員が職務上、違法な行為をして誰かに損害を与えた場合に、国や地方公共団体が賠償責任を負うことを定めています。

例えば、警察官が職務質問中に過剰な暴力を振るい、ケガをさせた、役所の職員が個人情報を漏洩し、精神的苦痛を与えたといった場合です。
条文で見ると以下のようになります。

成り上がリーガルポイント

第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

これらを細かく分類して6つの要件が国家賠償請求の要件とされています。

まとめると下表のようになります。

要件 説明
国または公共団体の公権力の行使に当たる行為であること 国や地方公共団体が国民に対して強制力を持って命令したり、規制したりする行為 職務質問、税務調査、生徒指導など
公務員であること 国家公務員、地方公務員、公立学校の教員、警察官など 警察官、教師、市役所職員など
職務を行うについてであること 公務員が職務として行っている行為であること パトロール中の事故、授業中の注意など
故意または過失があること わざと、または不注意で損害を与えること 故意に暴力を振るう、不注意で個人情報を漏洩するなど
違法な行為であること 公務員の行為が法律に違反していること 違法な逮捕、手続きを無視した処分など
他人に損害を加えたこと 公務員の行為によって実際に損害が発生していること ケガ、病気、精神的苦痛、財産上の損害など

国家賠償法の1条1項の要件を一つずつ詳しく

ここからは1つずつ見ていきましょう。

1. 国または公共団体の公権力の行使に当たる行為であること

国家賠償法が適用されるのは、「国または公共団体」が「公権力」を行使している場合です。
※国または公共団体、公権力の行使で分割される場合もあります。

公権力とは、簡単に言うと、国や地方公共団体が国民に対して持っている特別な力のことです。
例えば、法律を制定する力、税金、警察官が職務質問を権利などが該当します。

公権力の行使にあたる行為かどうかは、個別の事情を考慮して判断されます。
過去の判例を参考に、どのような行為が公権力の行使にあたると判断されているのかを理解しておくことが重要です。

2. 公務員が行為の主体であること

これは、国家公務員や地方公務員だけでなく、公立学校の教員や警察官なども含まれます。

公務員の種類や身分について、押さえておくと良いでしょう。
特に、非常勤職員や嘱託職員なども公務員に含まれるのか、といった点を理解しておくことが重要です。

3. 職務を行うについてであること

これは、公務員が職務として行っている行為である必要があります。

例えば、警察官がパトロール中に交通違反車両を発見し、追跡中に事故を起こした場合、教師が授業中に生徒を注意し、その生徒がショックで体調を崩した場合などが該当します。
※仕事中の行為である必要があります。

職務行為の範囲については、判例によって解釈が異なるので理解しておくと良いでしょう。
特に、職務行為と密接に関連する行為であっても、職務行為の範囲外と判断されるケースがあるため、注意が必要です。

4. 故意または過失があること

故意とは、わざと損害を与えるつもりで行為をすることです。
※なかなかないと思いますが。

そして過失とは、不注意や不注意によって損害を与えることです。

例えば、警察官がわざと暴力を振るってケガをさせた場合(故意)、役所の職員が不注意で個人情報を漏洩した場合(過失)などが該当します。

特に、重大な過失が認められる場合は、国や地方公共団体が公務員に対して求償できるため、注意が必要です。
※失火責任法が適用され、公務員に過失があると判断された例もあります。

5. 違法な行為であること

これは、公務員の行為が法律に違反している必要があります。

例えば、警察官が法律で認められていない方法で逮捕した場合、役所の職員が法律で定められた手続きを無視して処分を行った場合などが該当します。

違法性の判断基準について、特に、法律の解釈や判例を参考に、具体的な事例に当てはめて考えれると良いでしょう。

6. 他人に損害を加えたこと

公務員の行為によって、実際に何らかの損害が発生している必要があります。

例えば、ケガや病気、精神的苦痛、財産上の損害などが該当します。
何も起きてないのに、損害賠償請求することはできません。

損害の種類や範囲についてが重要で、特に、精神的苦痛に対する部分は当てはまるケースを押さえておくと良いでしょう。
空港の騒音被害では、営造物の営利目的で正しく使用されている場合でも利用者以外である近隣住民に対しても当然に及ぶという形で、国家賠償請求が認められるケースもあります。
※明らかな欠陥だけでなく、当たり前に侵害されるパターンは認められます。

まとめ

国家賠償法1条1項は、公務員が職務中の違法行為で他人に損害を与えた場合に、国や地方公共団体が賠償責任を負うという内容です。

例えば、警察官が職務質問中に過剰な暴力を振るったり、教師が体罰を加えたり、役所の職員が個人情報を漏洩したりした場合などが該当します。

ただし、賠償責任が認められるには、いくつかの要件を満たす必要があります。

まず、行為の主体は国または公共団体の「公務員」でなければなりません。
そして、その行為は「公権力の行使」にあたる職務行為である必要があります。つまり、私的な行為や職務範囲外の行為は対象外となります。

さらに、公務員に「故意または過失」があり、その行為が「違法」でなければなりません。
故意とはわざと損害を与えるつもりで行為をすることで、過失とは不注意によって損害を与えることです。
そして、その違法行為によって実際に「他人」に損害が発生していること、そして損害と行為の間に因果関係があることが必要です。

これらの要件はそれぞれ複雑な解釈があり、具体的な事例や判例を参考に判断されるので判例と合わせて要件を理解しておきましょう。