行政事件訴訟法

行政事件訴訟法をわかりやすく!!5つのポイント,4つの類型を詳しく解説!!

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行政事件訴訟法は、国民と行政との間で起こるトラブルを解決するための法律です。
例えば、役所から不当な処分を受けたり、税金に納得がいかない場合に、この法律に基づいて裁判で争うことができます。

行政事件訴訟法は、国民が行政に対して公平に権利を主張できるようにするためのルールを定めています。
具体的には、行政処分の取消し、行政の義務付け、違法行為の差し止めなどを求めることができます。
そんな行政事件訴訟には、大きく分けると抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟、機関訴訟の4つの種類にわかれています。(2条~6条)

行政事件訴訟法は、他の法律に特別な定めがない限り、すべての行政事件訴訟に適用されます。
ただし、税金や建築など、特定の分野に関する法律(特別法)がある場合は、そちらの法律が優先されます。
また、民事訴訟とは異なるルールがあることにも注意が必要です。

成り上がリーガルポイント
  • 行政事件訴訟法とは:国民と行政のトラブルを解決するための法律
  • 目的:国民が行政に対して公平に権利を主張できるようにすること
  • 主な機能:行政処分の取消し、行政の義務付け、違法行為の差し止め
  • 訴訟の種類:抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟、機関訴訟の4種類

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行政事件訴訟法をわかりやすく解説!!

例えば、こんなことがあったらどう思いますか?

こんなことがあったらどうする?
  • 役所から不当に営業許可を取り消された!
  • 税金を課せられたけど、納得いかない!
  • 近所の公園が突然閉鎖されることになった!

こんな時、「おかしい!」と思っても、どうすればいいのかわからない…行政事件訴訟法は、まさにそんな時に役立つ法律となります。

行政事件訴訟法は、国民と行政(国や地方公共団体など)との間のトラブルを解決するための法律です。

行政は、私たちの生活を豊かにするために、様々な活動をしていますが、時には間違った判断や決定をしてしまうこともあります。

そんな時、私たちが自分の権利を守るためには、行政と対等な立場で争えるルールが必要で、その手続に関する規定を設けているのが行政事件訴訟法になります。

行政事件訴訟法をわかりやすくまとめるキモは「4つの訴訟類型」

行政事件訴訟法をわかりやすくまとめる第一歩は、4つの訴訟類型を理解することです。
訴訟類型とは、訴訟の種類のことで、それぞれ目的や対象が異なります。

訴訟類型 説明
抗告訴訟(主観訴訟) 行政庁の決定に不服がある場合に起こす訴訟 営業許可の取消処分、税金の賦課処分、建築許可の不許可処分など
当事者訴訟(主観訴訟) 行政と国民、または国民同士が、法律上の権利や義務について争う訴訟 国有地の売買契約に関する紛争、公務員の人事に関する紛争など
民衆訴訟(客観訴訟) 国や地方公共団体の違法な行為を正すための訴訟 市長が税金を使って豪華な海外旅行に行っていた場合など
機関訴訟(客観訴訟) 国や地方公共団体の機関同士が、権限の範囲などを争う訴訟 国と都道府県が、ある政策の権限について争っている場合など

4つの類型はさらに2つに分類され、国民の個人的な権利の保護をすることを目的とした訴訟である、主観訴訟で法律上の争訟にあたるとされています。
もう一つは客観訴訟で、裁判所の審査が及ばず法律上の争訟に該当しないため、法律の定めがある場合のみ提起できるものとなります。

1. 抗告訴訟

抗告訴訟は、行政庁の決定に「待った!」をかける訴訟です。
4つの訴訟類型の中でも、特に重要なのが「抗告訴訟」です。
※中でも、取消訴訟に関する部分は頻出です。

抗告訴訟には、さらに6つの種類があります。

抗告訴訟とは
  1. 処分の取消しの訴え
  2. 裁決の取消しの訴え
  3. 無効等確認の訴え
  4. 不作為の違法確認の訴え
  5. 義務付けの訴え
  6. 差止めの訴え

これらの訴訟は、それぞれ目的や対象が異なります。
例えば、「処分の取消しの訴え」は、行政庁の処分を取り消してもらうための訴訟、「義務付けの訴え」は、行政庁に本来すべきことを命じる訴訟です。

また、これら6種類以外の抗告訴訟が認められないという規定は条文にないため、これ以外の抗告訴訟(無名抗告訴訟)は認められる場合があります。

取消訴訟は、要件が7つあるなど押さえておきたいポイントも多いです。

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2. 当事者訴訟

当事者訴訟は、行政と国民、または国民同士が、法律上の権利や義務について争う訴訟です。

例えば、購入した土地の境界線が曖昧で、隣の人とトラブルになっている場合、当事者訴訟を起こして解決することができます。

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3. 民衆訴訟

民衆訴訟は、国や地方公共団体の違法な行為を正すための訴訟です。

例えば、市長が税金を使って豪華な海外旅行に行っていた場合、市民であるあなたは、民衆訴訟を起こして、市長の行為を正すことができます。

4. 機関訴訟

機関訴訟は、国や地方公共団体の機関同士が、権限の範囲などを争う訴訟です。

例えば、国と都道府県が、ある政策の権限について争っている場合、機関訴訟で決着をつけることができます。

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行政事件訴訟法をわかりやすく!!全体像を掴むためのポイント

行政事件訴訟法の全体像を掴むためには、以下の5つのポイントを押さえておきましょう。

5つのポイント
  • 行政事件訴訟法は、他の法律に特別の定めがない限り、すべての行政事件訴訟に適用される
  • 民事訴訟とは異なるルールがある(例えば、原告適格、出訴期間、審査請求前置主義など)
  • 行政事件訴訟には、4つの訴訟類型がある(抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟、機関訴訟)
  • 執行停止:裁判で争っている間に行政処分の効力を一時的に停止できる制度
  • 仮の救済(仮の義務付け・仮の差し止め):裁判で争っている間に行政に一定の行為を命じたり、禁止したりできる制度

なお執行停止は、行政不服審査法と同じ考え方となります。
行政不服審査法では、職権というキーワードもポイントとなってきますので、合わせて覚えておくと良いでしょう。

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特別法との関係

行政事件訴訟法は、他の法律に特別な定めがない限り、すべての行政事件訴訟に適用される「一般法」です。
しかし、税金や建築など、特定の分野に関する法律(特別法)がある場合は、そちらの法律が優先されます。

例えば、税金に関する訴訟は、国税通則法や地方税法などの特別法で定められているため、行政事件訴訟法ではなく、これらの法律が適用されることになります。

民事訴訟との違い

行政事件訴訟法は、民事訴訟法をベースにしていますが、いくつか異なる点があります。

民事訴訟との違い
  • 原告適格:誰が訴訟を起こせるか
  • 出訴期間:いつまでに訴訟を起こさなければならないか
  • 審査請求前置主義:裁判の前に審査請求をする必要があるか

これらの違いは、行政と国民という関係の特殊性から生じるものです。
行政事件訴訟は、国民が行政の行為に対して不服を申し立てるための制度であり、民事訴訟とは異なる手続きやルールが設けられています。

民衆訴訟は国や公共団体の機関の幅広い違法行為に対して、誰でも訴訟を起こせる点が特徴です。
一方、住民訴訟は地方公共団体の特定の違法行為に対して、その住民のみが訴訟を起こせます。

民衆訴訟は違法な行為の是正のみを求めるのに対し、住民訴訟は是正に加えて損害賠償も請求できます。

また、根拠となる法律も異なります。
民衆訴訟は行政事件訴訟法、住民訴訟は地方自治法に基づいています。
民衆訴訟では違法行為の是正のみを命じる判決が下されますが、住民訴訟では是正に加えて損害賠償も命じられることがあります。

このように、民衆訴訟と住民訴訟は、原告適格、対象行為、訴訟の目的、根拠法、裁判所の判断がそれぞれ異なります。
どちらも市民が行政を訴えることができる制度ですが、実は、その根拠となる法律や原告適格、対象となる行為などに違いがあります。

4つの訴訟類型

行政事件訴訟には、以下の4つの訴訟類型があります。

4つの類型
  • 抗告訴訟:行政庁の処分や裁決に不服がある場合に起こす訴訟です。例えば、営業許可の取消処分や税金の賦課処分に対して、取り消しを求めることができます。
  • 当事者訴訟:行政と国民、または国民同士が、法律上の権利や義務について争う訴訟です。例えば、国有地の売買契約に関する紛争や、公務員の懲戒処分に関する紛争などが該当します。
  • 民衆訴訟:国や地方公共団体の違法な行為を正すための訴訟です。例えば、市長が税金を使って豪華な海外旅行に行っていた場合など、市民が訴訟を起こすことができます。
  • 機関訴訟:国や地方公共団体の機関同士が、権限の範囲などを争う訴訟です。例えば、国と都道府県が、ある政策の権限について争っている場合などに利用されます。

執行停止

執行停止とは、行政事件訴訟の判決が出るまでの間、行政処分の効力を一時的に停止する制度です。

例えば、営業許可の取消処分を受けている間に、その処分が違法かどうかを裁判で争いたい場合、執行停止を申し立てることで、裁判で結論が出るまで営業を続けることができるかもしれません。

執行停止の原則:執行不停止の原則とは?

執行停止について理解を深める上で、「執行不停止の原則」という概念を知っておく必要があります。
これは、行政事件訴訟法第25条第1項で定められており、「処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない」とされています。

処分の効力を止める争いであっても、その争いの最中も処分の効力を止めることができません。
簡単に言うと、営業取消の処分に対する争いであっても争っている間も原則、営業許可はされません。

仮の救済(仮の義務付け・仮の差し止め)

仮の救済とは、執行停止と同様に、行政事件訴訟の判決が出るまでの間、一時的な救済措置を求める制度です。

仮の義務付けは、行政庁に一定の行為を命じるもので、仮の差し止めは、行政庁に一定の行為を禁止するものです。

例えば、建築確認申請が不当に却下された場合、仮の義務付けを申し立てることで、裁判所が行政庁に対して建築確認をするよう命じることができます。

また、違法な建築工事が行われようとしている場合、仮の差し止めを申し立てることで、裁判所が行政庁に対して工事の中止を命じることができます。

執行停止、仮の救済については、下記で詳しく解説していますので、そちらをご覧ください。
特に執行停止と仮の救済では微妙に要件が違ったりするので理解しておくと良いでしょう。

行政事件訴訟法の執行停止の要件を仮の義務付け、仮の差止めと比較して理解する!! 行政事件訴訟法には「執行停止」「仮の義務付け」「仮の差止め」といった救済が規定されており、仮の救済といった呼ばれ方もします。 そん...

まとめ

行政事件訴訟法は、私たち国民が行政に対して、公平に権利を主張できるようにするための法律です。
この記事では、行政事件訴訟法の全体像を、わかりやすく解説しました。

  • 行政事件訴訟法は、国民と行政との間のトラブルを解決するための法律
  • 行政処分の取消し、行政の義務付け、行政の違法な行為の差し止めができる
  • 抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟、機関訴訟の4つの種類がある

行政事件訴訟法は、法律用語が多く、複雑な内容に思えるかもしれませんが、その根底にあるのは、国民の権利を守るというシンプルな理念です。

この記事が、行政事件訴訟法への理解を深めるきっかけになれば幸いです。