行政事件訴訟法

行政事件訴訟法の形式的当事者訴訟と実質的当事者訴訟の違いをわかりやすく解説!

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行政事件訴訟法の当事者訴訟には、形式的と実質的の2種類に分類することができます。
今回は、そんな当事者訴訟について、双方の違い、比較しながら解説していきます。

成り上がリーガルポイント
  • 当事者訴訟とは:行政と国民、または国民同士が公法上の法律関係について争う訴訟。
  • 2つの種類:行政庁の処分や裁決が直接関わる「形式的当事者訴訟」と、それ以外の公法上の法律関係に関する「実質的当事者訴訟」がある。
  • 原告適格:紛争に直接関わる当事者のみが訴訟を起こせる。
  • 被告適格:形式的当事者訴訟では相手方当事者または行政庁、実質的当事者訴訟では相手方当事者のみが被告となる。
  • 出訴期間:原則として制限なし(ただし、法律で定めがある場合はその期間内)

当事者訴訟は、行政と国民、または国民同士の公法上の法律関係に関する紛争を解決するための訴訟です。
当事者訴訟の種類、原告適格、被告適格、出訴期間など、これらのポイントを正確に理解し、具体的な事例に当てはめて考えてみると理解が深まります。

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行政事件訴訟法の形式的当事者訴訟と実質的当事者訴訟の違いを解説

当事者訴訟とは、行政と国民、または国民同士が、法律上の権利や義務について争う時に利用できる訴訟のことです。

例えば、市役所から購入した土地の境界線が曖昧で、隣の人と揉めている、公務員として働いているが、不当な懲戒処分を受けたなど、当事者訴訟を起こすことで、裁判所に問題を解決してもらうことができるかもしれません。

  • 「ある行政事件が、形式的当事者訴訟と実質的当事者訴訟のどちらに該当するか?」
  • 「ある事例において、当事者訴訟の原告適格を有するのは誰か?」

当事者訴訟と民事訴訟、何が違うの?

当事者訴訟と似たものに、民事訴訟があります。
どちらも、当事者間の争いを解決するための訴訟ですが、実は対象とする法律関係が異なります。

訴訟の種類 対象となる法律関係
当事者訴訟 公法上の法律関係 国や地方公共団体との契約に関する紛争、公務員の懲戒処分に関する紛争など
民事訴訟 私法上の法律関係 隣人との境界線争い、交通事故の損害賠償請求など

公法とは、国や地方公共団体などの公的機関と私たち国民との関係を定めた法律のことです。
一方、私法は、国民同士の関係を定めた法律のことで、文字通りなので分かりやすいと思います。

例えば、市役所から土地を購入した場合は、これは公法上の法律関係なので、当事者訴訟の対象となります。
しかし、隣の人から土地を購入した場合は、私法上の法律関係なので、民事訴訟の対象になります。

当事者訴訟は、あなたの権利を守る

当事者訴訟は、行政機関の決定に納得できない時や、公法上の権利関係でトラブルになった時に、あなたの権利を守るための「武器」となります。
裁判所に訴え出ることで、あなたの主張が認められれば、権利を回復したり、不利益を解消したりできるかもしれません。

当事者訴訟の種類

当事者訴訟には、大きく分けて、形式的当事者訴訟と実質的当事者訴訟の2種類があります。

1. 形式的当事者訴訟

形式的当事者訴訟は、行政庁の処分や裁決によって、当事者間の権利や義務が直接影響を受ける場合に起こされる訴訟です。

例えば、市が建築許可を出したが、隣の人が「自分の日照権が侵害される」と主張して市を訴えた場合や、国がA社に補助金を交付する決定をしたが、B社が「A社には補助金を受ける資格がない」と主張して国を訴えた場合などです。

これらのケースでは、市の建築許可や国の補助金交付決定が、当事者間の権利や義務に直接影響を与えています。

2. 実質的当事者訴訟

実質的当事者訴訟は、行政庁の処分や裁決とは直接関係なく、公法上の法律関係に関する紛争を解決するための訴訟です。

例えば、市議会議員の選挙で落選し、「当選した相手には被選挙権がない」と主張して相手を訴えた場合、公務員で、懲戒免職処分を受け、「処分は違法だ」と主張して国を訴えた場合などです。

これらのケースでは、行政庁の処分や裁決は直接関係していませんが、公法上の法律関係に関する紛争であるため、実質的当事者訴訟として扱われます。

形式的当事者訴訟と実質的当事者訴訟、何が違うの?

形式的当事者訴訟と実質的当事者訴訟は、どちらも当事者訴訟の一種ですが、いくつかの点で違いがあります。

訴訟の種類 紛争の原因 被告 判決の効果
形式的当事者訴訟 行政庁の処分や裁決 相手方当事者または行政庁 行政庁を拘束する(行政庁は判決に従って処分や裁決の内容を変更する義務を負う)
実質的当事者訴訟 行政庁の処分や裁決以外の公法上の法律関係 相手方当事者 行政庁を拘束しない

形式的当事者訴訟は、行政庁の処分や裁決が紛争の原因となります。
一方、実質的当事者訴訟は、行政庁の処分や裁決とは直接関係のない、公法上の法律関係が紛争の原因となります。

形式的当事者訴訟では、相手方当事者または行政庁のどちらかを被告にすることができます。
一方、実質的当事者訴訟では、相手方当事者のみを被告にすることができます。

形式的当事者訴訟の判決は、行政庁を拘束するため、行政庁は判決に従って処分や裁決の内容を変更する義務を負います。
一方、実質的当事者訴訟の判決は、行政庁を拘束しません。

当事者訴訟を起こすための3つの条件

当事者訴訟を起こすためには、以下の3つの条件を満たす必要があります。

1. 原告適格

原告適格とは、訴訟を起こす権利のことです。
当事者訴訟の場合、直接関わる当事者でなければ、訴訟を起こすことはできません。

例えば、市から土地を購入した場合、あなたにはその土地に関する当事者訴訟を起こす原告適格があります。
しかし、あなたの友達には原告適格はありません。

2. 被告適格

被告適格とは、訴えられる側の資格のことです。
当事者訴訟の場合、被告は紛争の相手方当事者または行政庁になります。

形式的当事者訴訟では、相手方当事者または行政庁のどちらかを被告にすることができますが、実質的当事者訴訟では、相手方当事者のみを被告にすることができます。

3. 出訴期間

出訴期間とは、訴訟を起こせる期間のことです。
当事者訴訟には、原則として出訴期間の制限はありません。

ただし、法律で特に定められている場合は、その期間内に訴訟を起こさなければなりません。
例えば、公務員が懲戒処分を争う場合、処分を受けたことを知った日から3か月以内に訴訟を起こす必要があります。

当事者訴訟をもっと身近に!具体的な事例で理解を深めよう!

当事者訴訟について、もう少し具体的なイメージを持てますか?「公法上の法律関係」って、ちょっと抽象的でわかりにくいですよね。
そこで、当事者訴訟の具体的な事例をいくつか紹介していきます。

事例1:国有地の売買契約に関する紛争(形式的当事者訴訟)

市が所有する土地を購入しました。しかし、購入後に、その土地の一部が実は隣接する国有地だったことが判明しました。
市に対して、契約の無効や損害賠償を求めたいと考えています。

この場合、市との土地の売買契約は公法上の法律関係であり、市の処分(売買契約の締結)が紛争の原因となっているため、形式的当事者訴訟を提起することができます。

事例2:補助金交付決定に関する紛争(形式的当事者訴訟)

中小企業を経営しており、国の補助金に応募しました。
しかし、会社は補助金の交付対象から外れてしまったため、この決定が不当だと考え、国を訴えたいと思っています。

この場合、国の補助金交付決定は公法上の法律関係であり、国の処分(補助金交付決定)が紛争の原因となっているため、形式的当事者訴訟を提起することができます。

事例3:公務員の懲戒処分に関する紛争(実質的当事者訴訟)

公務員として働いていますが、ある日、上司からパワハラを受けたと感じ、人事院に訴えました。
しかし、人事院はあなたの訴えを認めず、逆にあなたを懲戒処分にされたため、この処分が不当だと考え、国を訴えたいと思っています。

この場合、あなたの懲戒処分は、公務員という特別な身分に基づく公法上の法律関係に関する紛争であり、国の処分(懲戒処分)とは直接関係ありません。
そのため、実質的当事者訴訟を提起することができます。

事例4:地方議会議員の当選無効確認訴訟(実質的当事者訴訟)

ある市議会議員の選挙で落選しました。
しかし、あなたは、当選した相手候補者が、実は被選挙権(選挙で選ばれる資格)を満たしていないことを知ったため、相手の当選を無効にしたいと考えています。

この場合、相手の被選挙権の有無は、公職選挙法という法律に基づく公法上の法律関係に関する問題です。
そして、この紛争は、選挙という行政庁の行為とは直接関係はないため、そのため、実質的当事者訴訟を提起することができます。

まとめ

当事者訴訟は、行政と国民、または国民同士が、法律上の権利や義務について争う時に利用できる訴訟です。

  • 形式的当事者訴訟:行政庁の処分や裁決によって、当事者間の権利や義務が直接影響を受ける場合
  • 実質的当事者訴訟:行政庁の処分や裁決とは直接関係なく、公法上の法律関係に関する紛争を解決する場合

また、当事者訴訟を起こすためには、原告適格、被告適格、出訴期間の3つの要件を満たす必要があります。

当事者訴訟は、私たちの権利を守るために重要な役割を果たしています。

当事者訴訟は、民事訴訟と似ていますが、対象となる法律関係が公法上のものに限定される点が異なります。
また、形式的当事者訴訟では、行政庁も被告となり得る点が特徴です。