行政不服審査法

行政不服審査法と行政事件訴訟法「教示」の違いを【表で理解】

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行政不服審査法と行政事件訴訟法における教示の違いについて、徹底的に解説していきます。
行政不服審査法と行政事件訴訟法は、どちらも行政の決定に不服があるときに利用できる事後の救済手段ですが、教示に関する規定には大きな違いがあります。

成り上がリーガルポイント
  • 行政不服審査法には教示義務があるが、行政事件訴訟法にはないものがある(利害関係人、誤った教示)。
  • 行政不服審査法では教示義務違反があっても不服申立ては可能だが、行政事件訴訟法では教示義務違反を理由に訴えが却下されることはない。
  • 行政事件訴訟法では正当な理由があるときは取消訴訟の出訴期間に決まりがない。

行政不服審査法と行政事件訴訟法における教示義務の違い、誤った教示を受けた場合の救済措置など、これらの違いを理解することは、行政書士試験の対策においても大切です。

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行政不服審査法と行政事件訴訟法「教示」の違いは【義務】のありなし!?

行政不服審査法と行政事件訴訟法は、教示に関する規定には、義務が「ある」と「ない」で大きな違いがあります。
これらの違いについて見ていきましょう。

項目 行政不服審査法 行政事件訴訟法
教示義務の有無 義務あり (第82条) 義務あり
教示の内容 不服申立ての種類、不服申立てをすべき行政庁、不服申立て期間 訴訟要件、訴訟提起期間、管轄裁判所など(裁判所の裁量による)
教示の相手方 処分の相手方、利害関係人(請求があった場合) 特に規定なし(裁判所の裁量による)
教示の方式 原則として書面(ただし、口頭処分の場合を除く) 原則として書面(ただし、口頭での教示も可能)
教示義務違反の効果 不服申立書の提出により、審査請求または再調査の請求とみなされる (第83条) 教示しなかったことを理由に訴えが却下されることはない
誤った教示 救済措置あり (第22条) 救済措置なし (ただし、原告の故意または重大な過失によるものでない限り、訴訟提起期間は延長される)

行政不服審査法における教示 (第82条)

行政不服審査法では、行政庁は、審査請求、再調査の請求、その他の法令に基づく不服申立てができる処分をする場合には、処分を受けた者に対し、不服申立てに関する情報を書面で教示しなければならないとされています。
口頭で処分をする場合を除く(82条1項ただし書)とあるように、口頭で行う場合、教示義務を負いません。

これは、行政庁に教示義務があるということがわかります。

もし、行政庁が教示義務を怠った場合でも、不服申立てをすることができますが、行政庁の不作為は、不服申立ての権利を侵害する行為として、問題になる可能性があります。

行政事件訴訟法における教示は義務がない?

一方、行政事件訴訟法には、教示に関する明文の規定がなく、、行政庁が訴訟提起前に教示する義務はありません。
つまり、行政庁は、訴訟提起前に教示する義務を負っていないのです。

ただし、裁判所は、原告が訴訟要件を満たしていない場合など、訴訟提起前に教示を行うことがあります。
しかし、これは裁判所の裁量によるものであり、教示しなかったことを理由に訴えが却下されることはありません。

なぜ、こんな違いがあるの?

行政不服審査法と行政事件訴訟法では、手続の性質が異なるため、教示に関する規定にも違いが生じています。

行政不服審査法は、行政庁内部における比較的簡易な手続きであるのに対し、行政事件訴訟法は、裁判所における訴訟手続きであり、より厳格な手続きが求められます。

行政不服審査法は手続の簡易迅速性が求められます。

そのため、行政不服審査法では、審査請求人が適切な手続きを取れるように、行政庁に教示義務を課しているのです。

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教示とは?

教示とは、行政庁が、国民に対して、不服申立てに関する情報を提供することです。
例えば、あなたが行政から何らかの処分を受けた時、その処分に納得がいかない場合、あなたは不服申立てをすることができます。

しかし、不服申立てには、様々な種類や手続きがあり、一般の人には分かりにくいものです。
そこで、行政庁は、あなたが適切な不服申立てをすることができるように、必要な情報を提供する義務を負っています。

これが「教示」です。

例えば、こんな情報を教えてくれる

教示の内容は、法律によって異なりますが、一般的には、下記のような情報が提供されます。

教示で提供する情報(例)
  • 不服申立ての種類(審査請求、再調査の請求など)
  • 不服申立てをすることができる期間(審査請求期間など)
  • 不服申立てをすべき行政庁(審査庁など)

教示は、単なる行政からの「お知らせ」ではなく、不服申立ての権利を保障し、適切な手続きを取れるようにするための、重要な制度であることがわかります。

行政不服審査法における教示、もっと詳しく!

ここまでで違いについて見てきました。
ここからは、行政不服審査法の教示について掘り下げていきます。

教示がされる対象

行政不服審査法では、以下の2つのケースで教示を受けることができます。

  1. 処分の相手方:処分を受けた本人
  2. 利害関係人:処分によって直接的に影響を受ける可能性のある第三者

処分の相手方への教示

処分庁は、処分をする際に、処分の相手方に対して、不服申立てに関する情報を教示しなければなりません。
例えば、建築許可を不許可とされた場合、処分庁には審査請求に関する情報を教示する義務があります。

利害関係人への教示(82条3項)

利害関係人は、処分庁に対して、不服申立てに関する情報を教示するように求めることができます。

行政不服審査法において、「利害関係人」とは、処分を受けた本人(処分相手方)ではないものの、その処分によって法律上の利益を侵害される可能性のある人のことを指します。

例えば、所有する土地の近くに工場が建設されることになり、その処分に不服がある場合に近隣住民は利害関係人として、市役所に対して、審査請求に関する情報を教示するように求めることができます。

利害関係人の概念は、主婦連ジュース事件といった「原告適格」の判断にも深く関わっています。

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教示の内容は?(82条)

教示の内容は、以下の3つが条文として定められています。

教示すべき内容(82条1項)
  1. 不服申立てをすることができる旨
  2. 不服申立てをすべき行政庁
  3. 不服申立てをすることができる期間

教示は、原則として書面で行われます。
ただし、処分が口頭で行われた場合は、この限りではありません。(82条1項但書)

もし、行政庁が教示義務を怠った場合は、不服申立てをすることができます。
しかし、行政庁の不作為は、あなたの不服申立ての権利を侵害する行為として、問題になる可能性があります。

まとめ

行政不服審査法と行政事件訴訟法では、教示に関する規定が大きく異なります。
行政不服審査法では、行政庁に教示義務があり、その違反があった場合でも救済措置がありますが、行政事件訴訟法には誤った教示の救済や利害関係人への教示義務はありません。
行政不服審査法と行政事件訴訟法は、行政の決定に不服がある際に利用できる救済手段ですが、教示に関する規定に大きな違いがあります。

行政不服審査法では、行政庁は処分を行った際に、不服申立てができること、不服申立て先、不服申立て期間などを書面で教示する義務があります。
これは、国民が適切な不服申立て手続きを取れるようにするための配慮です。

一方、行政事件訴訟法には、行政庁が訴訟提起前に教示する義務はありません。
しかし、行政不服審査法では、教示がなかったとしても不服申立ては可能です。
一方、行政事件訴訟法では、誤った教示によって訴訟提起の機会を逃した場合でも、原告の故意または重大な過失によるものでない限り、訴訟提起期間は延長されます。

このように、両法における教示の規定は大きく異なります。
行政不服審査法では、国民の権利救済を重視し、不服申立て手続きの円滑化を図るために教示義務が課されていますが、行政事件訴訟法では、裁判所の判断に委ねるという姿勢が見られます。