行政不服審査法

行政不服審査法の職権探知主義を【審査請求の流れ】に合わせて徹底解説!!

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行政不服審査法は職権探知主義を採用することで行政不服審査法の目的のひとつである簡易迅速性を実現しています。
職権探知主義とは、審理員が、自らの権限で、積極的に事実を調査・把握することができる原則のことです。
例えてしまうと、審理員は、事件の真相を解き明かす「名探偵」のような存在です。

審査請求人または参加人も知っている範囲で情報を提供しますが、審理員は、それに加えて、様々な方法で、処分の真相に迫ります。

審理員には、この職権探知主義に基づき、物件の提出要求や審理関係人への質問といった、様々な手段を使って、積極的に事実を調査することを認めることで簡易迅速性を担保しています。
特に証拠収集・証拠調べ(第33条、第34条、第35条、第36条)についての職権に関しては、行政不服審査法の中でもポイントとなりますので、審理手続の流れと共に理解していきましょう。

成り上がリーガルポイント
  • 第33条:物件の提出要求:証拠となりうる書類や物の提出を関係者に求めることができます。
  • 第34条:参考人の陳述及び鑑定の要求:専門家の意見を聞くことができます。
  • 第35条:検証:現場を直接確認することができます。
  • 第36条:審理関係人への質問:審査請求人、処分庁、参加人に対して、事件に関する質問をすることができます。

例えば、騒音問題の審査請求で、審理員が現場検証を行う場合や、建築許可の審査請求で、審理員が建築士に鑑定を依頼する場合など、様々な事例を想定して、職権探知主義がどのように活用されるのかをイメージしてみましょう。

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行政不服審査法の職権探知主義と審理手続の流れ

まずは、審査請求の審理手続は、以下の流れで行われます。
この証拠収集等に権利を与えることは、簡易迅速性かつ公正な不服申立てを実現していることがわかります。
また、審査請求人または参加人は証拠書類等の提出ができますが、審理員から求められた場合は提出しなければなりません。

審査請求の審理手続の流れ
  1. 審査請求書の提出:不服申立ての理由や根拠を記載した審査請求書を提出します。
  2. 弁明書の提出:処分庁が、処分を行った理由や根拠を説明する弁明書を提出します。(第29条)
  3. 反論書・意見書の提出:審査請求人や参加人は、弁明書に対する反論や意見を書面で提出できます。(第30条)
  4. 口頭意見陳述:希望すれば、審理員の前で直接意見を述べることができます。(第31条)
  5. 証拠書類等の提出:審査請求人または参加人は証拠書類を提出できます(第32条1,2項)
  6. 証拠収集・証拠調べ:審理員が、職権探知主義に基づき、積極的に証拠を収集・調査します。(第32条3項~第36条)
  7. 審理員意見書の作成・提出:審理員は、審理の結果をまとめた意見書を審査庁に提出します。(第42条)
  8. 裁決:審査庁は、審理員意見書を参考に、最終的な判断(裁決)を下します。

職権探知主義は、特に証拠収集・証拠調べの段階で簡易迅速性という面で大きな役割を果たします。

第28条:審理手続の計画的進行 – 試合前の作戦会議

審理に入る前に、審理員は、審理の進め方について、簡易迅速性を実現するための計画を立てることを義務付けています。(第28条)

これは、試合前の作戦会議のようなもので、審理をスムーズに進めるための計画を立てます。

例えば・・・
  • どのような証拠をいつまでに提出するか
  • どのような順番で証人尋問を行うか
  • いつ口頭意見陳述を行うか

また、複雑な事件の場合の計画的遂行に関しても、審理関係人の招集、音声でのやり取りなどの方法についても条文として定めています。(第37条)

第29条:弁明書の提出 – まずは相手チームの戦略を知ろう

審理の第一歩は、処分庁に対して「弁明書」を提出を求めます。
弁明書とは、処分庁が、なぜその処分を行ったのか、その理由や根拠を説明する書類です。
例えば、建築許可を不許可とされた場合、 なぜ建築許可が下りなかったのか、具体的にどのような点が問題とされたのか。といった形で詳しい内容をまとめた弁明書の提出を求めます。

また、これを審査請求人または参加人に送付することも義務付けています。(29条5項)

第30条:反論書・意見書の提出 – 主張を伝えよう!

弁明書を読んだ審査請求人または参加人は、それに対して反論したいことがあるかもしれません。

そんな時は、「反論書」を提出することができ、反論書には、弁明書の内容に対する意見や反論を記載します。
また、参加人は「意見書」を提出することがで、意見書には、審査請求に関連する意見や情報を記載します。

反論書や意見書は、審理員が求めた場合は提出しなければならない

第31条:口頭意見陳述 – 直接の思いを伝えよう

「書面だけでは、思いが伝わらない…」というケースもあるため、「口頭意見陳述」という方法も認められています。
これは、審理の場で、審理員に対して直接、意見を伝えることができる制度ですが、請求人または参加人から申立てがあった場合、審理員は意見をする機会を与える必要があります。
ただし、意見を述べる機会を与えることが困難と認められる場合は、口頭意見陳述という機会を与えなくても良いとしています。

また、審査請求人または参加人の申立てした人を申立人と呼び、申立人は、審理員の許可を得ることで補佐人と共に出頭すること、処分庁に対する質問が認めれます。

申立人は審理員の許可を得れば、補佐人と出頭、処分庁へ質問できる

第33条:物件の提出要求

審理員は、真実を明らかにするために、関係者に対して、証拠となる書類や物の提出を求めることができます。(第33条)
例えば、工場の所有者に対して、騒音測定記録の提出といったものの提出を求めることができます。

また、それらを留めておくことも認められています。

第34条:参考人の陳述及び鑑定の要求

審理員は、必要に応じて、参考人や鑑定人に意見を求めることができます。(第34条)
参考人: 事件の事実を知っている人
例:近隣住民、目撃者
鑑定人: 専門的な知識や技術を持つ人
例:医師、建築士、技術者
参考人や鑑定人の意見は、裏付ける証拠ともなるため、審理を進める上で非常に重要です。

第35条:検証 – 現場を直接確認

審理員は、必要に応じて、現場を直接検証することができます。(第35条)
例えば、騒音問題の審査請求では、審理員が実際に現場に行って、騒音の状況を確認したり、騒音計で測定したりすることがあります。

審査請求人または参加人の申立てによって行うこともできます。
また、申立てによる検証については、申立人に立会いの機会を与えるように義務付けしています。

職権以外でも検証は行われる

第36条:審理関係人への質問

審理員は、処分庁の担当者、参加人といった審査関係人に対して、事件に関する質問をすることができます。(第36条)
審査請求人または参加人の申立てによっても行うことができます。

職権以外でも検証は行われる

第37条:審理手続の計画的遂行 – 複雑な事件もスムーズに!

事件の内容によっては、審理が長引いたり、複雑になったりすることがあります。
そんな時は、審理員は、審理関係人の意見を聞いて、審理手続きを計画的に進めることができます。
例えば、審理のスケジュールを決めたり、争点(争いとなっている点)を整理したりすることで、審理をスムーズに進めることができます。
※簡易迅速性を求めています。

遠隔地に住んでいるといった事情で相当と認められた場合は、政令に定めるところによって、通話といった音声によるもので意見を聴取することができます。

第38条:審査請求人等による提出書類等の閲覧等

審査請求の過程で、審査庁に提出された書類を閲覧したり、コピーをもらったりすることができます。
ただし、第三者に利害関係が及ぶ場合は、その閲覧を拒むことができます。(1項)

必ずしも閲覧できるわけでない

閲覧、交付に関しては、提出人の意見を聞くことを求めていますが、審理員が聞かなくてもよいとした場合は、意見を聞かなくても良いとしています。(2項)
また、閲覧には日時や場所の指定ができます。(3項)
実費の範囲内で政令で定める額の手数料も必要(4項)となりますが、経済的に困難であることやその他理由が認めれる場合は、減額もしくは免除されます。(5条)

第39条:審理手続の併合又は分離 – 複数の事件をまとめて審理することも

複数の審査請求が、同じような内容である場合、審理員は、それらの審査請求をまとめて審理することができます。
逆に、一つの審査請求の中に、複数の争点がある場合、審理員は、それらの争点を分けて審理することもできます。

同じようなケースで相続といった承継も15条で規定があります。
全ての権利を受け継ぐ場合は、当然に審査請求人の地位を継承されます。
ただし、一部的な継承、処分に対する権利を受け継ぐ場合は、審査庁の許可を得る必要があります。

第40条:審理員による執行停止の意見書の提出

審理員は、必要と認めるときは、審査庁に対して、執行停止をするべきだという意見書を提出することができます。
執行停止とは、審査請求の結果が出るまで、処分の効力を一時的に止めることです。
審理員の意見は、審査庁が執行停止を判断する際の重要な参考資料となります。

第41条:審理手続の終結

審理員は、必要な審理を終えたと認めるときは、審理手続を終結します。
必ずしも審理が終わるわけでないため、物件が提出されない。意見陳述に出頭しないといった。審理手続を継続できない場合は、終結することができる旨を規定しています。

簡易迅速性を求めているので、こういったケースが許されないという風に覚えておくと良いでしょう。

第42条:審理員意見書

審理員意見書は、審査庁が最終的な判断を下す際の重要な参考資料となります。
審査庁は、審理員意見書の内容を十分に考慮した上で、裁決を行います。

審理手続を終結したときは遅滞なく、審理員意見書を作成し、速やかに事件記録とともに審査庁に提出しなければなりません。

遅滞なく作成、速やかに提出

まとめ

審査請求の審理手続については主に行政不服審査法第2章第3節で詳細な規定を設けています。
行政不服審査法の職権探知主義は、審理員が「名探偵」のように、真実解明のために積極的に証拠収集や事実認定を行うことを可能にしています。

これは、審査請求人の情報収集能力の不足を補い、行政庁と対等な立場で審理を進めるためのものです。

審理員は、物件提出要求、参考人・鑑定人尋問、現場検証、審理関係人への質問など、様々な「秘密兵器」を駆使して、真実を明らかにし、公正な解決を目指します。