行政不服審査法

行政不服審査法の職権と執行停止とは?執行停止の意味、条文を徹底理解!!

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行政不服審査法は職権と執行停止というキーワードが出てきますが、審理員に与えられる職権として執行停止はありませんので、混同するポイントかもしれません。
執行停止とは、審査請求人の権利を守るために処分の効力や執行といった手続きを停止することを指します(25条2項~6項)
処分庁の上級行政庁又は処分庁である審査庁に与えられた職権となります。
審理員に与えられているのは、執行停止すべき旨の意見を提出する権利です。

成り上がリーガルポイント
  • 処分庁の上級行政庁又は処分庁である審査庁:執行停止
  • 審理員:執行停止の意見書提出
  • 執行不停止の原則:審査請求において処分の効力は妨げられない。

審査請求によって、処分の効力、執行または手続の続行は妨げることができないという執行不停止の原則も押さえておきたいポイントとなります。

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行政不服審査法の職権と執行停止とは?執行停止の意味を徹底解説

執行停止とは、審査請求や再調査請求をしている間、処分の効力や執行を一時的に停止させることができる制度です。
行政不服審査法では職権といったキーワードが度々登場しますが、執行停止以外の部分では、審査請求の審理手続の中で審理員に与えられた権利としても登場します。
こちらは手続の簡易迅速性を実現するためのもので、執行停止を行うものではありません。

また、執行停止については、4つの要件を満たす場合に行うことができます。

4つの要件
  1. 審査請求等がされていること
  2. 執行停止の必要があると認められること(重大な損害、公共の福祉、本案の見込み)
  3. 緊急の必要があると認められること
  4. 補充性(他の手段では目的を達成できなこと)

要するに執行停止をしなければならないですよね。ということが多角的な視点で明らかである必要があります。

また、執行不停止の原則といった論点もあります。
例えば、運転免許の取消処分を受けた場合、執行不停止の原則がなければ、審査請求や再調査請求の結果が出るまで免許を使い続けることができてしまうといった、延命措置を取ることができてしまいます。
この例で言うと、執行停止がされれば、結果が出るまで免許は有効とされます。

この執行停止の職権は審理員に認められた権利ではないことは、繰り返しになりますが押さえておきたいポイントとなります。

執行停止は守り神

執行停止は、例えるなら、不服申し立て中のあなたの「守り神」のような存在です。
行政の処分によって、生活や仕事に重大な影響が出るのを防いでくれる、心強い味方になってくれます。
例えば、不当な解雇に対する執行停止会社から不当に解雇されたため、この解雇に対して審査請求を行うことにしました。

しかし、審査請求の結果が出るまでは、無職の状態になってしまいますが、審査請求と同時に、執行停止を申し立てることができます。
通常であれば執行不停止の原則なので、処分の効力は継続されますが、執行停止が認められれば、審査請求の結果が出るまで、会社に在籍し続け、給料を受け取ることができます。

執行停止の最大のメリットは、審査請求や再調査請求の結果が出るまで、処分による不利益を避けることができる点です。
例えば、営業許可の取消、立ち退き命令、資格停止処分など、生活や仕事を直接的に守ることができます。

行政不服審査法の執行停止の要件(第25条:執行停止の4つの要件)

執行停止は、職権が与えられているように、誰でもいつでも認められるわけではありません。

行政不服審査法第25条によると、執行停止が認められるためには以下の4つの要件を全て満たす必要があります。

1. 審査請求、再調査請求、または再審査請求がされていること

執行停止は不服申立てとセットで行われる手続きです。
執行不停止を完全に認めてしまうと、場合によっては、権利救済が実現できなくなる可能性があります。

つまり、審査請求、再調査請求、または再審査請求のいずれかを行っていないと、執行停止を申し立てることはできません。

2. 執行停止の必要があると認められること

執行停止の必要性については、以下の3つの観点から判断されます。

必要性の判断ポイント
  • 重大な損害:処分によって、回復困難な損害が生じる恐れがあること
  • 公共の福祉:執行停止をしても、公共の福祉に重大な影響を及ぼさないこと
  • 本案について理由がある:不服申立てに理由があり、認められる見込みがあること

重大な損害とは?

重大な損害とは、金銭的な損害だけでなく、当然、精神的な損害や社会的評価の低下なども含まれます。

例えば、運転免許の取消処分によって、仕事に行けなくなったり、営業許可の取消処分によって、長年築き上げてきた信用を失う、資格停止処分によって、キャリアに傷がつくなどといったことも重大な損害に該当する可能性があります。

公共の福祉とは?

公共の福祉とは、社会全体の利益のことです。
執行停止によって、社会全体に大きな不利益が生じる場合は、執行停止は認められません。

例えば、危険な建築物の解体命令に対して執行停止を認めると、近隣住民の安全が脅かされる。感染症の蔓延を防ぐための営業停止処分に対して執行停止を認めると、感染拡大のリスクが高まるといった、国民に生命に関わる場合が想定されます。

本案について理由があるとは?

本案について理由があるとは、文字通りに不服申立てに根拠があり、審査請求や再調査請求が認められる見込みがあることを意味します。

審理員は、提出された証拠や意見陳述の内容などを総合的に判断して、本案について理由があるかどうかを判断し、最終的には意見書として提出をします。

3. 緊急の必要があると認められること

執行停止は、緊急の必要があると認められる場合にのみ認められます。
例えば、すぐに処分が執行されると、取り返しのつかない損害が生じる場合、審査請求や再調査請求の結果が出るまで待てないほど、切迫した状況にある場合などです。

公共の福祉に影響を与える場面も緊急性が高いということができますね。

4. 補充性:他の手段ではダメなの?

執行停止は、他の手段では目的を達することができない場合にのみ認められます。
例えば、処分庁に相談しても、対応してもらえない場合や仮の救済措置では不十分な場合などです。

条文では、他の方法によって実現できる時は執行停止はできないとされています。

審査庁の判断:迅速な決定が必要

審査庁は、執行停止の申立てを受け取ったら、速やかに執行停止をするかどうかを決定しなければなりません。(25条7項)
申し立てや提出された証拠などを検討し、執行停止の要件を満たしているかどうかを判断します。

差し迫った状況がある場合に執行停止を求めるわけですから、速やかに対応するのは当たり前です。

執行停止の申立ては、審査請求書と同時に提出することができます。

執行停止の決定:認められることも、認められないことも

審査庁は、執行停止の要件を満たしていると判断すれば、執行停止を決定します。
一方、執行停止の要件を満たしていないと判断すれば、当然ですが執行停止を認めません。

執行停止が認められたら?

執行停止が認められると、処分は一時的に効力を失うわけですから、審査請求や再調査請求の結果が出るまで、生活や仕事を続けることができます。
※結果を踏まえて認められない場合は再度処分の効力が発生することになります。

執行停止が認められなかったら?

執行停止が認められなかった場合は、処分は効力を持ち続けます。
その後の争いを行うなど、別の方法で執行停止を求めることもできます。

執行停止、取り消されることもあるの?

執行停止が認められた後でも、状況が変われば、審査庁は執行停止を取り消すことができます。(第26条)

例えば、執行停止によって公共の福祉に重大な影響が生じることが明らかになった場合などは、執行停止が取り消されることがあります。

執行停止は一度決定しても解除されるパターンもあると覚えておきましょう。

行政不服審査法の職権探知主義と執行停止の関係は?

審理手続のなかで、審理員は職権探知主義に基づき、証拠収集・証拠調べ、事実認定といった職権による事実確認を行うことができます。
審理員に権利を与えることで手続の簡易迅速性を担保する形となります。
そのため、審理員は、執行停止の要件を満たしているかどうかを判断するために、様々な情報を収集する中で、証拠を見つけるかもしれません。

その場合に審理員がすることができることを条文で定めています。

第40条:審理員による執行停止の意見書の提出

審理員は、必要と認めるときは、審査庁に対して、執行停止をするべきだという意見書を提出することができます。(第40条)
審理員の意見は、審査庁が執行停止を判断する際の重要な参考資料となります。

職権探知主義についての詳細はこちらで解説しております。

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まとめ

行政不服審査法第25条は、執行停止について定めています。
執行停止は、審査請求や再調査請求の結果が出るまで、処分の効力や執行を一時的に止めることができる制度です。
職権探知主義は、審理員が真実発見と公正な解決を図るために、自らの権限で積極的に事実を調査・把握できる原則です。審理員は、証拠収集・証拠調べ、事実認定、法律の適用、審理の指揮、和解の勧告、執行停止の意見書提出、審理手続の終結など、広範な権限を有しています。

執行停止が認められるためには、4つの要件を満たす必要があります。

  • 審査請求、再調査請求、または再審査請求がされていること
  • 本案について理由があるとみえる
  • 緊急の必要があると認められること
  • 処分の効力の停止以外の措置では目的を達することができないこと

この4つのポイントが認められるかを見極めるのも試験勉強としてもポイントとなってきます。

この記事で解説した内容を参考に、職権探知主義と執行停止をしっかりと理解し、使える知識としておきましょう。