行政不服審査法

行政不服審査法の適用除外の覚え方、例外を知ってバッチリ!

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行政不服審査法の適用除外の覚え方について、条文に合わせたまとめをしながら徹底的に解説します。
行政不服審査法は、行政の決定に不服がある時に、その決定を見直してもらうための手続きを定めた法律です。
しかし、この法律は、全てに適用されるわけではありません。

成り上がリーガルポイント
  • 適用除外の理由:それぞれの処分や不作為が、なぜ行政不服審査法の対象外とされているのか、その理由を理解することが重要です。
  • 具体的な事例:条文の抽象的な表現を、具体的な事例に当てはめて考えることで、理解が深まります。
  • 他の法律との関連:行政手続法の適用除外と比較することで、より理解が深まります。

特定の決定については、行政不服審査法の適用が除外される、つまり「使えない」ケースがあるのです。

適用除外となるケース(例)
  • 国会議員が逮捕された
  • 裁判で罰金刑を言い渡された
  • 大学の入学試験に不合格になった

これらのケースでは、行政不服審査法は適用されません。
なぜなら、これらの決定は、行政不服審査法の目的や性質に合わないと判断されているからです。

法律用語をなるべく使わず、身近な例え話を交えながら、あなたの疑問を一つ一つ解消していきますので、ぜひ最後まで読んでください。

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行政不服審査法の適用除外の覚え方を分かりやすく解説!

行政不服審査法は、行政の決定に不服があるときに、その決定を見直してもらうための手続きを定めた法律です。
しかし、この法律は万能ではなく、適用されないケースがあります。
例えば、国会の決定は国権の最高機関の判断であるため、裁判所の決定は司法権の独立を保障するため、刑事事件に関する処分は刑事手続きの対象であるため、などです。

行政不服審査法第7条は、適用除外となる処分を、以下の12のケースに分けて規定しています。

適用除外〔第7条〕

1. 国会の両院若しくは一院又は議会の議決によってされる処分
2. 裁判所若しくは裁判官の裁判により、又は裁判の執行としてされる処分
3. 国会の両院若しくは一院若しくは議会の議決を経て、又はこれらの同意若しくは承認を得た上でされるべきものとされている処分
4. 検査官会議で決すべきものとされている処分
5. 当事者間の法律関係を確認し、又は形成する処分で、法令の規定により当該処分に関する訴えにおいてその法律関係の当事者の一方を被告とすべきものと定められているもの
6. 刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官又は司法警察職員がする処分
7. 国税又は地方税の犯則事件に関する法令に基づいて国税庁長官、国税局長、税務署長、国税庁、国税局若しくは税務署の当該職員、税関長、税関職員又は徴税吏員がする処分及び金融商品取引の犯則事件に関する法令に基づいて証券取引等監視委員会、その職員、財務局長又は財務支局長がする処分
8. 学校、講習所、訓練所又は研修所において、教育、講習、訓練又は研修の目的を達成するために、学生、生徒、児童若しくは幼児若しくはこれらの保護者、講習生、訓練生又は研修生に対してされる処分
9. 刑務所、少年刑務所、拘置所、留置施設、海上保安留置施設、少年院又は少年鑑別所において、収容の目的を達成するためにされる処分
10. 外国人の出入国又は帰化に関する処分
11. 専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分
12. この法律に基づく処分(第五章第一節第一款の規定に基づく処分を除く。)

行政不服審査法の適用除外は、一見すると複雑ですが、それぞれのケースの背景や理由を理解することで、体系的に整理することができます。
条文に合わせて理由付けをしてみます。

適用除外〔まとめ〕
  1. 国権の最高機関の決定は特別扱い
  2. 司法の独立を守るため
  3. 国の重要な決定は慎重に
  4. 専門家の判断を尊重
  5. 私人間で解決すべき問題
  6. 犯罪捜査は別の法律で
  7. 税金や金融の専門的な分野
  8. 教育の現場での判断を尊重
  9. 矯正施設の秩序維持のため
  10. 主権国家の判断
  11. 専門的知識や技術に基づく評価
  12. 例外の中の例外

ここからはひとつずつ詳しく見ていきましょう。

1. 国会の処分 (第7条1号) – 国権の最高機関の決定は特別扱い

国会の処分とは、国会が行う決定や議決のことです。

適用除外となる例
  • 法律の制定や改正
  • 予算の議決
  • 条約の承認
  • 国会議員の懲罰

これらの処分は、国権の最高機関である国会が行うものであり、その決定は、行政不服審査法の対象外とされています。
国会の決定に不服がある場合は、国民は選挙で議員を選ぶことで間接的に意思表示をすることができますが、行政不服審査法を使って直接争うことはできません。

2. 裁判所の処分 (第7条2号) – 司法の独立を守るため

裁判所の処分とは、裁判所や裁判官が行う裁判や、その執行に関する行為のことです。

適用除外となる例
  • 民事裁判や刑事裁判の判決
  • 罰金や懲役などの刑罰
  • 差し押さえや競売などの強制執行

これらの処分は、司法権の独立を保障するため、行政不服審査法の対象外とされています。

裁判所の決定に不服がある場合は、控訴や上告といった裁判所内の手続きを利用することができますが、行政不服審査法を使って争うことはできません。

3. 国会と密接に関わる処分 (第7条3号) – 国の重要な決定は慎重に

国会の議決を経て、または国会の同意や承認を得た上で行われる処分も、行政不服審査法の対象外です。
これは、国会の意思を尊重し、国の重要な決定を慎重に行うためです。

適用除外となる例
  • 条約の締結
  • 予算の執行
  • 内閣総理大臣や最高裁判所長官の任命

4. 検査官会議で決すべきものとされている処分 (第7条4号) – 専門家の判断を尊重

検査官会議とは、専門的な知識や技術を持つ検査官が集まって、特定の事項について調査や審議を行う会議のことです。

適用除外となる例
  • 医師免許や薬剤師免許の取消し
  • 試験の合格・不合格決定

検査官会議の議決を経て行われる処分であり、行政不服審査法の対象外とされています。
これは、専門的な判断を尊重し、審査の迅速化を図るためです。

5. 当事者訴訟 (第7条5号) – 私人間で解決すべき問題

当事者訴訟とは、私人間における権利義務関係の紛争について、裁判所が当事者の主張に基づいて判断を下す訴訟のことです。

適用除外となる例
  • 隣人との境界線争い
  • 借金返済のトラブル
  • 離婚訴訟

これらの紛争は、私人間で解決すべき問題であり、行政不服審査法の対象外とされています。

6. 刑事事件に関する処分 (第7条6号) – 犯罪捜査は別の法律で

刑事事件に関する処分とは、検察官、検察事務官、または司法警察職員が、犯罪の捜査や起訴に関して行う行為のことです。

適用除外となる例
  • 逮捕
  • 勾留
  • 起訴
  • 不起訴

これらの処分は、刑事訴訟法などの法律で定められた手続きに基づいて行われるものであり、行政不服審査法の対象外とされています。

7. 国税・地方税・金融商品取引の犯則事件に関する処分 (第7条7号) – 税金や金融の専門的な分野

国税や地方税の犯則事件に関する処分、金融商品取引の犯則事件に関する処分も、行政不服審査法の対象外です。
これらの処分は、税法や金融商品取引法など、専門的な法律に基づいて行われるものであり、行政不服審査法とは異なる手続きで救済されるべきだと考えられています。

8. 学校等における処分 (第7条8号) – 教育の現場での判断を尊重

学校、講習所、訓練所、研修所などにおける処分も、行政不服審査法の対象外です。
これらの処分は、教育、講習、訓練、研修の目的を達成するために必要なものであり、教育現場の判断を尊重する必要があるからです。

適用除外となる例
  • 学生の停学処分
  • 講習生の退学処分

9. 刑務所等における処分 (第7条9号) – 矯正施設の秩序維持のため

刑務所、少年刑務所、拘置所、留置施設、海上保安留置施設、少年院、少年鑑別所などにおける処分も、行政不服審査法の対象外です。
これらの処分は、収容の目的を達成するために必要なものであり、施設内の秩序維持を優先する必要があるからです。

適用除外となる例
  • 受刑者の懲罰
  • 少年院生の外出禁止

10. 外国人の出入国又は帰化に関する処分 (第7条10号) – 主権国家の判断

外国人の出入国や帰化に関する処分も、行政不服審査法の対象外です。
これらの処分は、国の主権に関わる重要な問題であり、行政不服審査法とは異なる手続きで判断されるべきだと考えられています。

適用除外となる例
  • 在留資格の不許可処分
  • 強制退去処分
  • 帰化許可の不許可処分

これらの処分は、出入国管理及び難民認定法や国籍法などの法律に基づいて行われるものであり、行政不服審査法とは異なる専門的な知識や手続きが必要となります。

なお、補完的保護対象者が適用除外となるのは、行政手続法の適用除外となりますので、2つの差として押さえておきましょう。

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11. 試験・検定の結果についての処分 (第7条11号) – 専門的知識や技術に基づく評価

試験や検定の結果についての処分も、行政不服審査法の適用除外です。

適用除外となる例
  • 弁護士試験や司法試験などの国家資格試験
  • 英検やTOEICなどの語学検定
  • 運転免許試験

これらの試験や検定は、高度な専門知識や技術を評価するものであり、合否の判断には、客観的な基準に基づく専門家の評価が必要です。
そのため、これらの結果に対する不服申立ては、行政不服審査法ではなく、それぞれの試験や検定を管轄する法律に基づいて行われることになります。

12. 行政不服審査法に基づく処分 (第7条12号) – 「例外の中の例外」

行政不服審査法に基づく処分も、原則として、行政不服審査法の適用除外です。

適用除外となる例
  • 審査請求や再調査の請求に対する裁決
  • 執行停止の決定

これは、行政不服審査法自体が、不服申立ての手続きを定めた法律であるため、その手続きの中で行われる処分については、改めて不服申立てをすることはできないという考え方によるものです。

ただし、例外的に、行政不服審査法第5章第1節第1款に規定されている処分(行政不服審査会の委員の任免など)については、行政不服審査法に基づく審査請求をすることができます。

第7条第2項:国や地方公共団体などに対する処分 – お互いの関係は「特別」

行政不服審査法第7条第2項は以下のように定めています。

適用除外〔第7条〕

「国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその機関に対する処分で、これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の相手方となるもの及びその不作為については、この法律の規定は、適用しない」

これは、国や地方公共団体などの公的機関が、お互いの関係において行う処分や不作為は、行政不服審査法の対象外とするという規定です。

適用除外となる例
  • 国が地方公共団体に対して交付する補助金の額に関する決定
  • 都道府県が市町村に対して行う指導監督

これらの処分や不作為は、国と地方公共団体、または地方公共団体同士の「内部関係」における問題であり、行政不服審査法の対象となる「行政」と「国民」の関係とは異なる性質を持つため、適用除外とされています。

まとめ

行政不服審査法は、行政の決定に不服があるときに使える法律ですが、例外的に適用されないケースがあります。

例えば、国会の決定や裁判所の判決、刑事事件に関する処分、学校や刑務所での処分などは、行政不服審査法の対象外です。

これらの適用除外は、国権の最高機関である国会や、司法権の独立を保障する裁判所の決定を尊重するため、あるいは、専門的な判断を必要とする分野や、異なる法律で救済されるべき分野であるためなど、様々な理由があります。

ぜひ参考にしてみてください。