行政の決定に納得できない時、「不服申立て」という権利がありますが、どんな決定でも不服申立てできるわけではありません。
その決定に「処分」か「不作為」に該当するのか、そして、行政不服審査法の適用除外に該当しないかを見極める必要があります。
- 処分(第2条):行政庁があなたに対して何かをすること
例:許可、認可、免許の取消し、税金の賦課決定など - 不作為(第3条):行政庁があなたに対して何かをしないこと
例:法令に基づく申請に対して、相当の期間内に処分をしないこと
行政指導といった限定的なものではなく、処分か不作為である必要があります。
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行政不服審査法2条,3条の不服申立ての対象とは?徹底解説!!
行政の決定に「ちょっと待った!」をかけたい時、頼りになるのが「不服申立て」制度ですが、どんな決定でも不服申立てできるわけではありません。
- 運転免許の停止処分に納得がいかない!
- 開業許可がなかなか下りない…
- 隣の家が違法建築なのに、役所が動いてくれない!
こんな時、行政不服審査法に基づいて不服申立てができるのでしょうか?
実は、不服申立てできるかどうかは、行政の行為が「処分」か「不作為」かによって変わってきます。
行政不服審査法第2条と第3条に焦点を当て、不服申立ての対象となる「処分」と「不作為」について、具体例や判例を交えながら詳しく解説していきます。
行政不服審査法 第2条,第3条は【入口】的な存在!!
行政不服審査法第2条と第3条は、不服申立ての対象となる行政の行為を定めた条文です。
第2条は、行政の「処分」に対して、第3条は、行政の「不作為」に対して不服がある場合の審査請求について規定しています。
これらの条文は、いわば不服申立ての「入り口」のようなものです。
(処分についての審査請求)
第二条 行政庁の処分に不服がある者は、第四条及び第五条第二項の定めるところにより、審査請求をすることができる。
(不作為についての審査請求)
第三条 法令に基づき行政庁に対して処分についての申請をした者は、当該申請から相当の期間が経過したにもかかわらず、行政庁の不作為(法令に基づく申請に対して何らの処分をもしないことをいう。以下同じ。)がある場合には、次条の定めるところにより、当該不作為についての審査請求をすることができる。
行政の「処分」とは?(第2条)
「処分」とは、行政庁が公権力を行使して、国民の権利や義務に影響を与える行為のことです。
ちょっと難しい言葉ですが、簡単に言うと、行政があなたに対して何かをすることです。
- 運転免許の取消し
- 建築許可の不許可
- 税金の賦課や減免
- 営業停止命令
- 補助金の交付決定
など、行政があなたに対して行う様々な行為が「処分」に該当します。
これらは、まさに公権力の行使によって行われるもので、それらの処分に対して、不服申立てができる権利が与えられています。
処分のポイントは「公権力」と「法的効果」
処分には、以下の2つのポイントがあります。
1.公権力に基づく行為であること
行政機関は、法律によって与えられた権力(公権力)に基づいて処分を行います。
例えば、警察官が交通違反の切符を切る行為は、道路交通法という法律に基づく公権力の行使であり、処分に該当します。
2.法的効果を伴う行為であること
処分は、あなたの権利や義務に直接的な影響を与える行為です。
例えば、建築許可が下りれば、あなたは建物を建てることができますが、不許可になれば、建物を建てることはできません。
「この行政の行為は、処分に該当するのかな?」と迷う場合は、以下のポイントをチェックしてみましょう。
国民の権利義務に影響を与えるか
行政の「不作為」とは(第3条)
「不作為」とは、行政庁が法令に基づく申請に対して、相当の期間内に何の処分もしていないことをいいます。
※いわゆる仕事をしていない状態とも言えます。(事情はあるとは思いますが。)
- 建築確認申請を提出したが、何ヶ月も放置されている
- 補助金の交付申請を提出したが、何の連絡もない
- 苦情を申し立てたが、対応してもらえない
といった場合が、「不作為」に該当します。
不作為のポイントは「法令に基づく申請」と「相当の期間」
不作為には、以下の2つのポイントがあります。
1.法令に基づく申請があること
法律に基づいて、行政庁に何かを申請している必要があります。
例えば、あなたが建築確認申請を提出した場合、行政庁は、建築基準法に基づいて、その申請を審査し、許可または不許可の処分をする義務があります。
※単なる通知に過ぎない行政手続法で言う届出等は処分はないため、該当しません。
2.相当の期間が経過していること
行政庁が処分をするまでに、法律で定められた期間や、社会通念上妥当とされる期間を過ぎていなければなりません。
例えば、建築確認申請の場合、建築基準法で審査期間が定められています。その期間を過ぎても処分がない場合は、不作為とみなされる可能性があります。
「この行政の対応は、不作為に該当するのかな?」と迷う場合は、以下のポイントをチェックしてみましょう。
行政庁が処分をするまでに、相当の期間が経過しているか
全てが該当する訳ではなく、適用除外もある
行政不服審査法でも第7条に適用除外を定めており、全ての処分・不作為が対象となるわけではありません。
行政不服審査法は、原則として、全ての行政処分や不作為に対して適用されます。
これを「一般概括主義」と言い、法律に特別の規定がない場合でも申立てすることができます。
※限定的にすると不服申立てできない範囲ができてしまうため
しかし、例外的に、行政不服審査法の適用が除外される処分や不作為があります。
- 国会や裁判所の決定
- 刑事事件に関する処分
- 学校や刑務所などにおける処分
- 外国人の出入国や帰化に関する処分
これらの処分や不作為は、行政不服審査法の対象外となります。
まとめ
行政不服審査法第2条と第3条は、それぞれ「処分」と「不作為」について定めています。
これらの条文は、不服申立ての対象となる行政の行為を明確にし、国民の権利利益を保護するための重要な規定です。
行政書士試験では、これらの条文の理解に加え、適用除外についても問われる可能性があるため、しっかりと学習しておく必要があります。
行政の決定に不服がある場合は、まず、その決定が「処分」か「不作為」に該当するのか、そして、行政不服審査法の適用除外に該当しないかを確認していく必要があります。