行政不服審査法の審査請求には要件を満たす必要があります。
要件を満たしていない場合は、審理すらしてもらえません。
そのため、審査請求がされた場合、まずは要件を満たしているかの調査から実施されます。
- 処分性:行政指導が審査請求の対象となる「処分」に該当するかどうかは、将来の不利益処分に結びつく蓋然性があるかどうかで判断される。
- 原告適格:誰が審査請求できるのか、法律上の利益の要件を理解する。
反射的利益だけでは原告適格を認められない。(主婦連ジュース事件) - 審査請求期間:審査請求期間を徒過すると審査請求できないため、正確に把握する。
- 審査請求書の記載事項: 審査請求書に記載すべき事項を漏れなく正確に記載する。
- 審査請求の提出先:原則として審査庁に行いますが、処分庁を経由することも可能です。
要件は5つポイント全てを満たす必要があります。
条文の内容も見つつ、ポイントとなる要件について押さえていきましょう。
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行政不服審査法の審査請求の要件[5つの要件]
まずは、5つのポイントを見ていきましょう。
調査が行われ、全てを満たす場合のみ、審理手続が行われるため、関所のような役割を果たしています。
- 不服申立の対象:行政庁の処分または不作為であること
- 審査請求期間:処分があったことを知った日から3ヶ月以内、または処分があった日から1年以内であること
- 正当な当事者:処分または不作為によって、法律上の利益を侵害された者であること
- 審査請求の方式:書面(審査請求書)または口頭で、必要な事項を記載して行うこと
- 審査請求の対象:することができる権限を有する行政庁に対して行うこと
審査請求とは、行政庁の処分や不作為に対して、不服がある人が、その決定を見直してもらうための手続で、以下のような決定によって不利益を被った場合にすることができるものとなります。
- 飲食店を開業するための許可申請を却下された
- 運転免許の取消処分を受けた
- 建設工事を許可しないという決定を受けた
ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
1.不服申立の対象:処分と不作為【第2条・第3条】
審査請求ができるのは、行政庁の「処分」または「不作為」に対してで、当然これを満たす必要があります。
審査請求の対象となるのは、行政庁の「処分」または「不作為」です。
「処分」とは、行政庁が法律に基づいて行う、国民の権利や義務に影響を与える行為のことです。
一方、「不作為」とは、行政庁が法令に基づく申請に対して、相当の期間内になんの処分もしていないことをいいます。
※処分が行われる前のことや、申請がされていないものに対する不作為は対象としての要件は満たしません。
- 処分:行政庁が法律に基づいて行う、国民の権利や義務に影響を与える行為のことです。(第2条)
- 不作為:行政庁が法令に基づく申請に対して、相当の期間内になんの処分もしていないこと。(第3条)
ただし、全ての処分や不作為が審査請求の対象となるわけではありません。
行政不服審査法第7条には、審査請求ができない「適用除外」のケースが規定されています。
2. 審査請求期間:3ヶ月以内が原則、1年以内が絶対期限
審査請求期間は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3ヶ月以内が原則です。
また、処分があった日の翌日から起算して1年を経過すると、正当な理由があっても審査請求をすることができなくなります。
ただし、正当な理由があるは、この期間が延長されることもあります。
当該諸部についての再調査の請求をしたときには、その決定があったことを知った費から1ヵ月以内という例外もあります。(18条1項)
また、不作為については規定がないということから、不作為が続いている限り、審査請求をすることができます。
3. 正当な当事者:法律上の利益が必要
審査請求をするためには、あなたが処分または不作為によって、法律上の利益を侵害された者である必要があり、これを不服申立適格といい、主婦連ジュース事件では、この申立適格についてがポイントとなりました。
また、当事者以外にも総代、代理人といった規定もあります。
- 法律上の利益があるもの(不服申立適格)
- 総代(11条)
- 代理人(12条)
※法律上の利益とは、法律によって保護された権利や利益のことです。
行政不服審査法の目的として、簡易迅速性が求められています。
そのため、複数人で審査請求をする場合は3人を超えない範囲で代表者を立て、委任することができます、これを総代といい、11条で定められています。
総代以外の審査請求人を共同審査請求人と呼びますが、総代を通じてしか行為をすることができません。(11条3項)
反射的利益だけでは要件を満たさない!
しかし、単に「損害を受けた」とか「不利益を被った」というだけでは、法律上の利益は認められません。
例えば、住んでいる地域に、新しいゴミ処理場が建設されることになりました。
ゴミ処理場の悪臭が心配ですが、ゴミ処理場から遠く離れているとしたら、直接的な被害を受ける可能性は低いとします。
ゴミ処理場の建設によって「反射的利益」を侵害されたことになりますが、これは法律上の利益には該当しません。
※法律によって直接的に保護されているわけではないからです。
この反射的利益に関連する判例として、主婦連ジュース事件があります。
この判例では、必然的に侵害されるおそれがない場合、不服申立適格(原告適格)は認められないとしています。
4. 審査請求の方式:書面または口頭で
審査請求は、原則として書面で提出し、これを審査請求書と言います。
審査請求書には、氏名や住所、処分の内容、不服の理由などを記載する内容が定められています。
ただし、法律で認められている場合は、口頭で審査請求をすることもできます。(19条1項)
記載する内容は19条2項で処分に対して、3項で不作為で記載すべき内容を規定しています。
2 処分についての審査請求書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 審査請求人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 審査請求に係る処分の内容
三 審査請求に係る処分(当該処分について再調査の請求についての決定を経たときは、当該決定)があったことを知った年月日
四 審査請求の趣旨及び理由
五 処分庁の教示の有無及びその内容
六 審査請求の年月日
3 不作為についての審査請求書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 審査請求人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 当該不作為に係る処分についての申請の内容及び年月日
三 審査請求の年月日
また、これらの記載事項に不備があった場合の対処としては、相当の期間を設けて補正を命じる必要があります。
似たようなケースとしては、行政手続法の第7条の「審査に対する審査、応答」の条文があります。
申請書に不備がある場合の行政庁の対応について定めていますが、行政手続法は受け取りを拒否できないという理由もあることから、下記、2つの選択肢が規定されています。
行政不服審査法と行政手続法では、不備に対する対応が異なるため、注意が必要です。
それぞれの法律の意義を考えると分かってくると思います。
5. 審査請求をすることができる権限を有する行政庁に対して行うこと
審査請求は、処分や不作為を行った行政庁に対して直接行うわけではありません。
審査請求をすることができる権限を有する行政庁に対して行います。
処分庁を経由して審査請求することも可能
ただし、審査請求をすべき行政庁が、処分を行った行政庁(処分庁)と異なる場合でも、審査請求書を処分庁に提出することができます。(第21条)
この場合、処分庁は、審査請求書を速やかに審査庁に送付しなければなりません。
まとめ
審査請求を行うためには、5つの要件を満たす必要があります。
- 不服申立の対象が処分または不作為であること
- 審査請求期間内であること
- 審査請求人が法律上の利益を有すること
- 審査請求の方式に従っていること
- 審査請求をすることができる権限を有する行政庁に対して行うこと
行政不服審査法における審査請求は、行政書士試験でも押さえておきたいポイントとなります。
特に、審査請求の対象となる「処分」と「不作為」の区別、法律上の利益の要件、審査請求期間の計算などは、困惑するポイントでもあるため、しっかり知識として定着させましょう。
また、審査請求の提出先は、原則として審査庁ですが、処分庁を経由することも可能である点も、細かいですが覚えておきましょう。
行政不服審査法は、複雑な法律ですが、一つ一つの条文を丁寧に読み解き、その趣旨を理解することで、行政書士試験合格に大きく近づくことができます。
この記事が、試験対策に役立つと嬉しいです。